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第30-2話敵は俺と面識あるヤツ?
「まさか彼が罠を張っていたとは思いませんでした……ケイロ殿下に言われた通りに運動部の部室裏と用務員の控室を調べてみましたが、魔力の痕跡があるだけで、何も見つからず……」
「隠したい物の置き場所を変え、その都度魔物を召喚する魔法を仕掛けていたのかもしれないな。魔法が発動した時、古びた感じはなかった。この数日の間に施したのだと思う」
ケイロが真面目な顔をして話す。こうしているとカッコいいのに……残念だ、と心の底から思ってしまう。
顔は嫌いじゃないから強く拒めないんだよ、うん。顔が良いのは得だよなーホント。ヤってる最中に息荒げていてもカッコいい――ああっ、ダメだダメだ! 何考えてんだよ俺……。
思考が度重なるエロに毒されてきている気がして、俺はその場でげんなりする。そんな心身が疲れ果てた俺へケイロが視線を向けてきた。
「ここしばらく様子を見ていたが……どうも俺が太智と一緒にいると、何も仕掛けてこない気がする」
「え……?」
「隠し物も、恐らく最初は運動部の部室に隠して、太智が野球部だから隠す場所を変えたのかもしれない、俺と結婚した太智なら、秘宝を見ることができてしまうからな……敵としては太智の存在は厄介だが、できれば巻き込みたくないという気配がする」
ケイロたちが探している裏切り者がこの高校にいる誰かに憑りついているらしいから、下手に動くと俺に気づかれると思っているのか? ってことは――。
俺はふと思ったことを素直に呟いた。
「ひょっとしたら、ある程度は俺と面識あるヤツかもしれない……のか?」
「そんなところだ。太智、もし知っている奴の中で違和感を覚えたら、その時は俺に教えてくれ」
結婚させられちまったことは置いといて、事情を知って関わった以上は力になりたい。この世界のアドバイザー的存在でもあるしな。
何か思い浮かぶかと思って、俺は腕を組んでクラスメイトたちや校内の友人たちのことを思い返してみる。でも、違和感を覚える人間は頭に浮かばなかった。
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