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第34-1話俺にも魔力が?

 大量の本に囲まれたその空間へ足を踏み入れた時、違う世界に入ってしまったような感覚に襲われる。  出入口付近にあるカウンターには、本来図書委員がいるハズなのに誰もいない。中も静まり返っていて、廊下からの雑踏が消え、無音の世界に閉じ込められたような……。  あんまり図書館へ来慣れていないせいか、ここは俺がいる世界じゃない気がして落ち着かない。早く賑やかしい放課後の体育館へ行きたくてたまらなくなる。 「百谷、何もないなら行くぞ」  俺が促してみると、ケイロは辺りを見回してから首を横に振った。 「……魔力の痕跡がある。少し待っていろ。回収する。……風の精霊よ、根幹の力を集め、我が元へ――」  そう言いながらケイロが片腕を広げ、小声で呟きながらゆっくりと奥へ進んでいく。  するとケイロを取り囲むように半透明の淡い緑色した光球が次々と浮かび、蛍のようにフワフワと室内を飛び交い始めた。  キレイだなあと心から感動しつつ、俺のRPG好きの血が騒ぐ。  もしかしたら今の俺でも何かできちゃったりして。それはもう安易な気持ちで、俺は今まで聞いてきたケイロの呪文っぽいものを思い出して呟いてみた。 「えーっと……風の精霊よ、我が目の前に現れたまえ……なんちゃって」  ……チッ、何も起きないか。残念。  ただの中二病を発症させただけに終わって、俺は誤魔化すように視線を逸らして小さく咳をする。と、 「……あ……」  小さな淡い緑色の光球がひとつだけ、俺の顔と向き合うように浮かんでいた。  他の光球はせわしなく動いているのに、それだけはジッと動かず、俺にその姿を見せ続けてくれた。

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