64 / 121

第35-2話司書の舞野先生

 行ってくれた……怒られなかったってことは、俺たちが何をしていたかには気づかなかったのか。良かった……。  あからさまに俺が安堵していると、ケイロはもう見えなくなった舞野先生の背を追うように、さっきまで居た場所を睨んだ。 「……あの男と古角は仲が良いのか?」 「悠は昔から本をよく読んでるから、図書室にも頻繁に出入りしているんだよ。だから司書の舞野先生と雑談することもあるらしいし、好きな作家のことで話が盛り上がる時もあるって聞いたことあるぞ」  素直に俺の知っていることを言ってから、警戒したままのケイロを見て疑心を感じ取る。  舞野先生と悠を疑っている――先生はともかく、悠は問題ないだろ。俺にとって一番付き合いが長くて、この校内の中でお互いに気心が知れた相手。その悠の様子がおかしくなることなんて、今までなかったし。  ちゃんとそこのところを訴えようと思っていたら、ケイロは放っていた光球たちを手元に集め、スゥ……と消した後に息をついた。 「魔力の痕跡はあったが、それ以外の収穫はなし、か……あの二人が魔法を使った形跡はないから、関係はなさそうだな」 「そ、そうか……良かったぁ……」 「長居は無用だ、さっさと体育館へ行ってバスケをするぞ。今日は線外にボールが出た際、それを取りに行きながら近くの年長者に『バスケがしたいです……』と言う練習を――」 「それは試合に関係ないから! ってかお前、それやっちまったら目立つどころじゃないからな? 悪ノリ通り越して、重度のオタク認定されて変人街道まっしぐらになるからな!」  冗談のような本気の台詞に、俺は全力でツッコむ。  理解力高いハズなのに、色々真に受け過ぎて俺の世界の常識からズレてしまっているコイツを本気で放っておけない。  ちゃんと俺がついてやらないと……と考えかけて、女房役がマジで板についてきている自分に泣きたくなった。

ともだちにシェアしよう!