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第37-2話世界は違えど、火の扱いは丁寧に
俺の切実な訴えに対して、ケイロが不敵に笑う。
「却下する、と言いたいところだが、校内の行事でも負けるのは嫌だからな。明日の大会を優先しよう……終わったら覚悟しておけ。大会の翌日は休みだからな」
球技大会で疲れ切った俺の体で遊び倒すつもりか……逃げてぇ……でも、前にヤってから三日目になるし、ヤらねぇと俺、自爆しちまうし……くそぉ……。
ボールを強く掴んで震えながら何も言えない俺へ、ケイロが「楽しみにしているぞ」と耳打ちしてから離れていく。
……バカ野郎、近くで喋るなぁ……うう……腰が疼く……。
膝が踊りそうになるのを必死に堪えつつ、俺はパスがしやすい位置についたケイロに向かって叫ぶ。
「じゃあ投げるぞ! しっかり取れよ!」
一回くらい体にぶつけちゃってもいいだろうという気持ちで、俺は「火の精霊よ、共に駆けろ」と口早に呟きながらケイロへ強いパスを送る。
俺の手を離れた瞬間――ボウッ、とボールに火がともる。
強く念じてしまったせいか、それはもう天井に届きそうなほど大きな火柱が立ってしまった。
「ええええっ?! も、百谷……っ!」
ボールと一緒に火柱がケイロへ届きかけ――シュウゥゥゥゥ……。
突如として火柱は姿を消し、ケイロの手元から白煙が立ち昇った。
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