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第38-2話悠への疑惑
「……悠……?」
まさか……火が見えてる?
この火を見られるのは、ケイロたちと同じ世界の住人か、俺みたいに結婚させられてあっちの住人にされてしまったヤツか。
悠とは子供の頃からの付き合いだから、あっちから来た人間じゃないとは思う。
でも、俺みたいにあっちの人間にさせられちゃっていたら……?
試合が進んで、再度俺がボールを取って悠へ投げ渡す際に火をつけてみる。
――パシッ。二度目はなんの問題もなく、悠はミットでボールを受け取った。
その姿を見て俺は心から安堵した。
だって、もし見えていたら、悠も俺と同じくあっちの誰かと結婚して、三日に一度は中出しされているってことになる……あれを親友もやっていると思ったら、まともに顔を見ることができない。
そもそも毎日悠と昼食を一緒にしているが、アイツは左手に指輪をしていない。それを思い出して、さらに俺は安堵に安堵を重ねた。
大丈夫、悠は違う。きっと最初の球の時はボーッとしていたから、急に球が来てビックリしただけなんだろう。
だからこれはケイロたちに報告しなくてもいいと判断することにした。
……一度気になってしまったことを、頭から消去することはできなかったけれども。
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