72 / 121

第39-2話いざ球技大会!

 右へ重心を傾け、軽くフェイントをかけてから、俺はケイロへパスを出す。  ――バシッ。受け取った瞬間、ケイロの口端が引き上がった。  そのままドリブルでゴール下へ向かい、ジャンプのモーションに入る。咄嗟に反応した敵チームのひとりが大きく両腕を上げ、ケイロのゴールを阻もうとする。  ……ああ、それじゃあ止められない。だって――。  ガシィィッ! ゴールリングが派手に鳴る。そして、ダァンッ、ダム、ダム……とボールの弾んで転がる音が聞こえるほど周囲が静まり返り――体育館中にどよめきと歓声が上がった。  試合開始一分未満でいきなりダンクシュート決めたら、そりゃあ盛り上がるわ。しかも寡黙でミステリアスな転校生で通っているイケメン。騒がれて当然だよなあ。  変人として目立ってるワケじゃないし、ケイロが嬉しそうにしているから良かった。敵チームには、ケイロの王子なプライドに巻き込まれて悪いな、と思うけれど。  こんな調子で始まった一回戦は俺たちの圧勝だった。  ケイロにボールを渡せば必ず点を取ってくれるし、ケイロを妨害しようとすれば、他のチームメイトや俺が余裕でゴールできたし、面白いほどに点数が取れた。  この初戦の活躍ぶりでチームメイトはケイロを一気に信頼して、それ以降の試合は徹底してケイロの指示に従ってくれた。ひとり強いヤツがいるだけでも、球技大会レベルなら勝ち上がりやすい。そこへチームのまとまりも生まれれば、怖いもの知らずのチームへと進化できた。

ともだちにシェアしよう!