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第40-2話昼休みの緊急事態

 マジかぁ……確かに素人バスケのままなら、俺らのクラス圧勝間違いなしだもんな。せめて決勝は展開が読めない、熱い試合にしたいっていう先生か生徒会かの意図が見えやがる。  急な決定に憤っているチームメイトたちが、拳を握ってケイロへ熱く訴えてきた。 「高校最後の球技大会、ここまで来たら優勝したい!」 「だから百谷、今から決勝の打ち合わせしようぜ。やって欲しいこととかあったら、なんでも言ってくれ!」  みんな熱くなっている中、ケイロは普段通りの冷静な顔――と見せかけて、若干いきなりぶつけられた熱気に気圧されているのが俺だけには分かる。そして返答に困っているのも読めた。 「じゃあ今から体育館に行って作戦会議とウォーミングアップするか。百谷、絶対に勝つぞ」  俺の助け舟にケイロが「ああ」と答えて立ち上がる。  教室内が「バスケ頑張れ」「応援してる」とにわかに騒がしくなる中、悠が目を輝かせて百谷を見上げた。 「サッカーは初戦で敗退しちゃったから、僕たちの分まで頑張って百谷君! 僕も応援に行くから。太智の活躍も期待してる」  こっちにも悠が眩しい眼差しを向けてきて、俺は「任せとけ!」とその場のノリで明るく応え、立ち上がりかけた。  だが、急に悠の表情が曇り出し、脇腹を押さえて呻いた。 「ゆ、悠、大丈夫か?!」 「急に、お腹が……痛ぁ……」 「保健室行くぞ! 連れていってやるから、俺の肩に掴まれ」  慌てて俺が駆け寄ると、悠が「ごめん……」と謝りながら俺の肩に腕をかけてくる。  一緒に立ち上がると、俺はケイロとチームメイトを交互に見た。 「今から俺は悠を保健室に運ぶから、先に体育館へ行ってくれ。すぐに合流する」  まばらに「分かった」「古角、無理せず休めよ」と声が飛んで来る中、俺はケイロから背を向けて歩き出す。  その時、「必ず来い。待ってるからな」とケイロの声が聞こえてくる。  みんながケイロへ過大な期待を寄せる中、コイツは俺に期待をぶつけてきた――応えてやらなくちゃな、と思いながら俺は教室を出た。

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