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第41-1話助け合うもんだろ、夫婦は

 保健室へ行くと、鍵は開いていたが保険医であるソーアさんの姿はなかった。  昼休みで他の先生方とご飯でも食べているんだろうと思いながら、俺は悠をベッドへ寝かす。唸りながら横たわる姿が本当に苦しげで、俺も同じように顔をしかめてしまう。 「大丈夫か? 今すぐ百谷先生探して、胃薬出してもらえるよう言ってくる――」 「……ここにいて、太智……頼むから……」  悠が俺の手を掴んで引き止めてくる。調子が悪いと心細くなるものだし、そんな時に保健室でひとりというのは辛いものがある。  でも待っていてもソーアさんがいつ戻るか分からないし、時間が無駄に過ぎていくだけだ。それに決勝の試合だってある。悠には悪いが、いつまでもここにはいられない。  どうにか宥めて納得してもらおうと思っていると、悠の指先がしっかりと俺の手に食い込んだ。 「試合に出ちゃいけない……危険だから……」  悠の言葉に俺は体を強張らせる。  危険って……悠、まさか……。  妙な動悸で頭がクラクラとしてくる俺を、悠は体を起こして覗き込んでくる。 「他のみんなは問題ないけれど、太智だけはあっちの世界のことに影響を受けちゃうから……絶対に行かないで。ここで僕の看病から離れられなかったことにして欲しい」  間違いない。悠は異世界の関係者だ。  引っかかっていた疑惑が確定してしまい、俺は激しく動揺しながら尋ねずにはいられなかった。 「あっちの世界って……悠、お前、どこまで知ってんだ? 危険ってどういうことだよ?!」 「ごめん、詳しくは言えない……僕に許されているのは、本来は無関係なのに巻き込まれた太智を守ることだけ……」  ケイロたちが前に言っていたことが俺の頭を過る。  俺と一緒にいたら何も仕掛けてこない――親友の俺を傷つけたくないから、今まで悠が止めてくれていたことを察するしかなかった。  しばらく俺たちは何も言えずにお互いを見続ける。  昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、球技大会の再開を告げてきた。

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