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第41-2話助け合うもんだろ、夫婦は

「……バスケの決勝で百谷を……ケイロを襲うのか」 「あの人がどう動くのかは分からない。教えられたのは、友人を傷つけたくなかったら引き止めておけ、ってことだけだから」  どう考えても今からケイロを襲う算段だ。試合に集中している隙に狙われたら――。  頭の中で答えが出るよりも先に、俺の体は悠の手を振りほどいて体育館へ向かおうとした。 「待って! 詳しい事情は知らないけど、太智も巻き込まれたんだろ? どうしてあの王子のために必死なんだよ?!」  悠の言うことは分かるし、俺もどうして自分がここまで焦っているのかという答えを持っていない。  でも早くケイロの元へ駆け付けてやりたい。だって俺は――。 「あー……一応俺たち、結婚しちまったから。助け合うもんだろ、夫婦は」  しっかり悠へ見えるように左手を上げ、俺は薬指の指輪を示す。  悠が目を大きく見開いた後。困ったように眉根を寄せながら、自分の左手を弄り出す。  ピィィィ……と細い肌色のテープを外し、俺と同じように左手を見せる。  その薬指には、まったく俺と同じ指輪がはめられていた。 「……分かるよ太智。だからこそ、僕もあの人を止められない」  今度は俺が目を丸くする番だった。  俺と同じように巻き込まれて結婚しちゃったのかよ、悠?!  うわぁ……あっちの住人はどうして安易に結婚して巻き込みやがるんだ……。  その場へ崩れ落ちて嘆きたい気持ちでいっぱいだったが、今はそれどころじゃない。俺はドアへ向かいながら悠へ告げた。 「今度詳しい話を聞かせてもらうからな? 絶対に逃げるなよ」 「僕のことを百谷君たちに言わないなら話すよ……言えないこともあるけど、どうしてこうなったのかは言えるから」  本当なら今すぐ聞きたくてたまらないが、ケイロの無事がまず第一だ。  俺は「分かった」と悠に言い残し、体育館へと走り出した。

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