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第42話黒い靄だらけの決勝戦
◇ ◇ ◇
体育館へ駆け付けて館内を目の当たりにした瞬間、俺は口をあんぐりと開けて立ち尽くしてしまった。
大勢の生徒が集まり、騒ぎながらバスケの試合を観戦する中。
中央で試合をする生徒たちに混じり、黒い靄で作られた獣っぽいものが何匹も徘徊し、ケイロを狙っていた。
前に襲ってきた狼っぽいヤツもいれば、鳥や鹿、水牛や虎、ヒグマや竜っぽいものまでいる。しかも消滅してもすぐに新しいヤツが介入できるよう、応援する生徒たちと一緒に、他の色々な形のヤツらが控え、様子をうかがっている。
暗黒の怪獣大戦争状態……もしくは百鬼夜行。こんな中で孤軍奮闘なんて、普通の神経なら心が折れている。俺なら絶対に降参して逃げ出していると思う。
ここまであからさまに敵が集まっていても、この場ではケイロと俺しか分からないという現状。ソーアさんやアシュナムさんの姿を探すけれど見当たらない。同時に襲われて、ここへ駆け付けられない状態だと察するしかなかった。
ケイロは試合をしながら、器用に敵と戦っている。
パスが回ってきてボールを取れば、ドリブルで敵を避けつつ火の玉パスで攻撃し、両手が自由になれば防御のフリして、アクションゲームみたいに光球手の平から出して戦っていた。
一匹一匹は大したことがないのだろうが、これだけの数を相手にしつつ試合をするというのはキツい。というか、まず無理だ。
これを二人で相手にするのも厳しい。でも、一人よりは断然いい。
俺は意を決して自チームの控えへ駆け出す。
ちょうど敵チームにゴールを決められたばかりで、俺の姿をすぐに見つけたケイロが「タイムだ、選手交代!」と、声を張り上げて審判に伝えてくれた。
ピィィィッ、と笛の音で試合が中断され、俺は立ち止まらずにチームのゼッケンを受け取り、身に着けながらコートへ足を踏み入れた。
「遅れて悪かった! 点数は……十点リードされてる、か。やっぱり専門のヤツがいると、簡単にはいかなくなるな。よし、落ち着いていくぞ」
一番近くにいたチームメイトと軽く手を叩いて交代すると、俺はゴール下へ向かい、ボールを手にする。
「……火の精霊よ、共に駆けろ」
ボソッと呟いてから、すかさずケイロへパスを出せば、火球となって飛んでいく。
上手い具合に黒い靄たちへボールがぶつかる位置に移動したケイロは、ニヤリと笑いながら俺に目配せする。お前も走れと促しているのが伝わってきて、すぐに走り出した。
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