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第43話試合と戦闘とうっかりと

 バシュッ、バシュッ、とボールが黒い靄の魔物たちに当たると貫通し、そのまま蒸発するように消えていく。どうやら質より量で攻めてきたらしい。  そしてケイロにボールが渡ると魔物たちの動きが活発化し、体当たりや引っ掻きなどで攻撃を仕掛けてくる。それを敵チームと同じようにドリブルしながらかわし、時にはジャンプし、傍からはケイロが鮮やかなプレイを繰り広げているように見えた。  華麗にドリブルシュートをケイロが決めた瞬間、わぁぁぁ……っ、と館内が歓声で揺れた。 「ナイス、百谷!」 「やっぱり坂宮が入ると百谷の動きが違うな。伸び伸びしてる」  チームメイトの声を聞いて、心の中で俺は苦笑する。  そりゃあ俺とパスの応酬できたら、黒いモヤモヤに攻撃しまくれるもんな。実質、攻撃の回数が倍増するようなもんだ。  ボールを持っていない時は魔法のみで攻撃できるけど、試合しながらだから集中できない。身の安全を考えれば試合どころじゃないし、本来なら試合を抜け出して、別の場所で戦闘すれば楽に戦えるようになるだろうが、ケイロが抜ければ試合は確実に負ける。  王子という何かあってはいけない立場。しかも異世界の学校の球技大会なんていう優先順位が最底辺の事項なのに、それでも試合は捨てない――。  一度欲しいと思ったものは絶対に狙い続ける性格。頭良いのにアホだ。そんなケイロの欲張りな一面に付き合う俺自身も、同様にアホだと思うしかなかった。  ケイロがボールを持っている間は、火を常時つけていた。  ドリブルついでに魔物へ当てて倒し、敵チームに迫られたら俺へパスを出し、ちょっとボールをキープしてからすぐケイロへ火の球を渡し――この繰り返しで魔物たちを蹴散らしていく。  でも、これだと焼け石に水でキリがない。  いっそ全体攻撃してやりてぇ……練習の時みたいに、炎の柱つきでパスできたら――。  俺にボールが回り、パスを出す時に思わず強くそう念じてしまう。  次の瞬間、ボールからブワァァッと炎が立ち昇り、魔物を払いながらケイロへパスが向かう。 「ゲッ、しまった……っ」  近くにいた魔物たちを一気に消せたのはいいが、炎はケイロをも襲う。  館内の人間には見えないし、触れても少し熱さを感じる程度でも、この中でケイロだけは大ヤケドを負ってしまう。  球の異変に気づいたケイロが一瞬目を見開く。  けれどパスを受け取ろうと手を構えた時、口端が引き上がっていた。

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