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第47-1話こっちの世界の魔法

   ◇ ◇ ◇  球技大会の翌日は土曜日で、学校は休みだった。  ただでさえ決勝まで全力を出し尽くした上、休みを見越してケイロに抱き潰されたせいで、俺は全身筋肉痛……まともに外出なんかできるハズもなく、自室のベッドに横たわるばかりだった。 「日頃、部活動とやらで運動している割にはか弱いな」  俺の部屋を自由に出入りできるケイロが、ベッドの縁に座ってニヤけながら人を覗き込んでくる。コイツのほうが試合と長時間の行為で体に負担はかかっているのに、筋肉痛どころか疲れを残していない。  顔良し、頭良し、運動神経も抜群で恐ろしいまでの体力バカ。ここに加減ができるっていう要素が加われば完璧なのに……とないものねだりをしつつ、俺は力なくケイロを睨む。 「お前みたいな超人が普通だと思うなよ……うう……喋るだけで微妙に体痛ぇ……」 「今日と明日、大人しくしていれば問題ないだろ。早く回復してもらわんと、お前を俺の暇つぶしに付き合わせられない……共に行きたい所が山ほどあるというのに」  最初はからかい半分の笑いを浮かべていたのに、後になってケイロが優しい眼差しを俺に向けてくる。  ……そんな愛しい相手を見るような目をするな。恥ずかしい。  俺は顔を布団に潜り込ませてケイロの視線から逃げる。  でも、すぐに布団を顔の所だけめくって、ケイロが俺の頬にキスしてきた。

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