85 / 121

第47-2話こっちの世界の魔法

 うっかり体がビクンッと跳ねて、全身に痛みが走った。 「……っ……そういうこと、今するなぁ……筋肉痛が……っ」 「悪いな……このまま太智で遊びたいところだが、今から用事があってこの地を離れなければいけない。しっかり養生してくれ」  そう言って手を振りながら、ケイロが魔法で繋がっている自分の部屋へと戻っていく。  完全に姿が消えて、向こう側の部屋からケイロの気配が一切感じられなくなったのを確かめてから、俺はそっとベッドを抜け出し、勉強机の上に置いておいたスマホを手にした。  そして再び横になると、スマホのチャットアプリを立ち上げる。  中を見れば悠からの連絡が入っていた。  すぐに選択して中身を確認する。送ってきた時間は今日の朝。 『いつでも連絡して。待ってる』  昨日、悠も俺と同じように、ケイロたちが追っている――確かマイラットっていう――ヤツと結婚していたことが分かってしまった。  全部は言えないが、言える範囲は教えてくれる。少しでも悠の現状を知りたいし、ケイロの役にも立ちたい。ただ板挟みの状態で顔を合わせて話をするのは難しいから、こうして馴染みのあるアプリを利用する。  ある意味、スマホ文化は俺たちの世界の魔法みたいなものだ。  仕組みが良く分からなくても、出来ないことを色々と可能にしてくれるのだから。  この時代に生まれて助かった……なんて思いつつ、俺は文字を打ち込んだ。

ともだちにシェアしよう!