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第52-1話これでも意志あるのか?

「うおっ、本当に出た。前から気になってたけど、これどうなってんだ?」  俺は思わず指を差し出し、光球に近づけていく。  モワッ、と。触ったという手応えはないし指が貫通したけれど、指が入っているところはほんのり温かくて、風呂場の湯気に指を突っ込んでいるような感触がした。  不思議だなあ、と思いつつ何度も指を上下させていたら、スス……。光球が自分から動いて、俺の指から離れた。 「もしかして触られるの嫌だった?」  呟いて小首を傾げる俺へ、光球が一瞬光を強めた。まるで返事をしてくれたような行動に、俺は顔を突き出してマジマジと観察する。 「ひょっとして意志あるのか?! へぇー……なあ、喋ることってできるのか?」  この質問にはなんの反応も見せない。どうやらこれが否定らしい。  まさかこんな光の球と意思疎通ができると思わず、俺は目を輝かせてしまう。  ゲームや漫画好きなら憧れるファンタジーが今、目の前に……っ!  今、ケイロたち以外の誰かにこんな所を見られたら、間違いなく変人認定される。校内でこんなことするもんじゃないよな、とドキドキするけど、溢れる好奇心は止められなかった。 「お前らもあっちの世界から来たのか? ……あ、光らねぇ。こっちにもいるんだ。へぇぇー……食べ物とか食べられるのか? せっかくだし、お近づきの印に何かあげたいんだけど……あ、ダメなのか」

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