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第54話変なこと言った?

「……え……俺、なんか変なこと言ったのか?」  困惑したまま各々に見交わしてから、アシュナムさんが大きく息を呑むのが見えた。 「精霊と意思の疎通が図れるとは……我々の世界ではあり得ない」  できないのかよ?! 話しかけるだけで充分なのに?  アシュナムさんの発言が信じられなくて、俺は慌てて背後の精霊に顔を向ける。 「そうなのか、お前?」  一瞬だけ申し訳なさそうに光球が弱く輝き、逃げるように姿を消してしまう。  なんだか怯えた様子だったような……ケイロたちを怖がっているのか?  疑問に思いながら顔を前に向け直すと、三人が険しい顔をして俺を見ていた。 「な、なんだよ……俺、変なことしたか?」 「……いや、物珍しいだけだ」  ケイロは鋭い眼差しで左右に控える二人を見やってから、こっちへ近づいてくる。 「もうすぐ授業が始まる。さっさと教室へ戻るぞ」 「ああ……って、ちょっと待てぇ、は、離れろよぉ……っ」  アシュナムさんたちに背を向けて歩き出そうとした途端、俺の隣に並んだケイロがしっかりと肩を抱いてきた。  ち、力が抜ける……歩くと振動が……ぅぅ、授業に集中できなくなる……ってか、これ一番誰かに見られちゃいけないヤツだろ?!  速く歩けと促すように、ケイロは俺の肩を押しながら颯爽と歩く。  そして背後の二人と距離を取った後、一度立ち止まって振り向く。  いつになくケイロの顔が怖い顔つきで、お付きの人であるハズの二人を牽制しているように見えた。 「この件に関しては他言するな。なんの力もない、俺が気まぐれで選んで固執している異世界人だとアイツらには思わせておけ」  そう言って見せつけるように俺の髪にケイロがキスを落とす。  なんか、俺、やっちゃいけないことやっちまった?  恥ずかしい真似はやめろと怒りたかったが、ケイロの真剣な空気に呑まれ、俺は何も言えずにケイロを見上げることしかできなかった。  ぼそり、とケイロが俺だけに聞こえる声で独り言を漏らす。 「こんなつもりで娶った訳じゃない。力なんか……」 「どういうことだ……?」 「……無意味で煩わしい雑音だ。太智は知らなくていい」  俺の肩を掴むケイロの指先に、グッと力が加わる。  状況はよく分からないが、どうも俺を守ろうとしているっぽい。  洗いざらい全部話せと言いたいが、俺にも言いたくないことはある。特に今は。  聞きたい気持ちを堪えて、俺は「そっか」と話を流した。

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