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第55話さっそくコンタクトあり

 午後の授業が終わって、野球部の部室へ向かった時だった。 「……ん?」  自分のロッカーを開けたら、折り畳まれた紙が置いてあって、一度首を傾げる。  そしてすぐに察しがついて俺は息を呑んだ。 「どーした坂宮?」  近くで着替えていた同学年の部員に話しかけられて、俺は咄嗟に首を横へ振る。 「な、なんでもない……ちょっとトイレ行ってくる」 「なんでもなくないじゃねーか。早く行って来いよ。トイレは何を差し置いても最優先だろ!」  笑いながら部室を出て行こうとする俺を、ソイツは快く送り出してくれる。  ありがとうよ、トイレの重要性を分かっていてくれて。  俺は親指をグッと立ててソイツの心意気に感謝すると、紙を持って体育館のトイレへ駆け込んだ。  個室に入って一旦深呼吸して息を整えると、俺は紙を開いていく。  そこには送り主の性格を表すような、きっちり整った字で書かれたメッセージがあった 。 『話がしたい。君に合わせるから場所と時間を指定してくれ。どうかくれぐれも殿下には内密に』  今日の昼間に伝言したら、もう返事きた。早いな……精霊、ちゃんと仕事してくれたな。  精霊有能だなあ、と思いながら俺は腕を組んで考え込む。  ケイロたちにバレないよう密会……それができれば苦労しないんだけど。しかも会ったことないけど、俺、この人の敵側の人間なんだけど。  ノコノコと勝手にひとりで行ったら、人質になっちゃう展開かコレ?  でも、悠の話を聞いてると何か事情がありそうだし、悪いヤツじゃなさそうな感じもするんだよな。どうも悠が惚れちゃった旦那さんみたいだし。  うーん……としばらく唸ってから、俺は「風の精霊よ、俺の前に現れてくれ」と呼び出す。  ふわぁ、と返事をするように一瞬だけ光を強め、すぐに明かるさを落とした光球が俺の目の前に現れてくれた。 「なあ……お前にお願いしたら、護衛になってくれたりするのか? あ、もちろん援軍歓迎な。精霊みんなで俺を守ってくれると嬉しいんだけど」  ダメ元で言ってみたら、精霊が快さそうに速攻で光を強めてくれる。  便利だ。そして頼もしいぞ精霊! これなら万が一襲われても対処できる。  後はケイロたちに気づかれないよう会う方法を考えないと――。  ……俺が体張ったら、どうにかなるか?  自分でもドン引きするような方法を考えてしまって、俺はひとり頬を引きつらせた。

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