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第56-2話●初めての……

 いつも夜にあっちの世界へ行って戻っているのは知っている。そろそろ帰ってきて就寝するだろうと予想していたが、案の定だった。  緊張で乾いた唇を湿らせてから、俺は足音を忍ばせてケイロの部屋に入る。  いつでも互いの部屋を自由に行き来できるのに、俺からこっちの部屋へ来るのは初めてだ。  まだ書類に夢中で、ケイロは俺が来たことに気づいていない。  ゆっくり、ゆっくり、近づいて――ベッドの縁に腰かけ、俺は書類の裏を人差し指で軽くつついた。  ここまでされたらケイロもさすがに気づいて、書類を枕元へ置いて俺を見上げた。 「わざわざこんな時間にどうした? 夜這いにでも来たか?」 「ああ。いつもケイロからばっかりだし、たまには俺からも来てやろうと思って」  ニヤリと笑ってから、俺はケイロの上に跨って顔を近づける。もうこの時点で全身が疼いて、早く繋がりたくてたまらない。  意外そうにケイロは一瞬だけ目を丸くしたが、愉快そうに笑みを返す。  無言の許可が出たところで、俺は自分から唇を重ねた。 「……ン……ぅあ……っ!」  俺が舌を絡ませ合いながらケイロの首に腕を回したら、突然体がグルッと回ってベッドへ倒される。そのまま横たわった体へケイロの脚が股の間に差し入れられ、背中と腰に手を回され、体と心をがっつりと捕らえられる。 「ん……っ……はぁ……ン……」  いつもなら俺から何もできず、ただ喘いで乱されるだけ。  でも今日は違う。必死に俺もケイロの体に触り、少しでも昂らせてやろうと愛撫を返す。  股間のほうへ手を回せば、スウェット越しに硬くなっているのが分かる。  今日も元気に俺を攻め立ててやりたくてたまらないようで何より……今だに俺が相手でよく勃つな、と感心してしまう。

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