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第59-2話深夜の待ち合わせ

 約束した場所は、学校の近くにある神社。  敷地を木々に囲まれたこの場所なら、誰かに目撃されにくいと思って指定した。  深夜二時の待ち合わせ――もし行けなかったらゴメンと先に謝っておいたが、言い出しておいて約束を破るハメにならなくて本当に良かったと俺は胸を撫で下ろす。  神社の入り口前で一旦立ち止まって呼吸を整えると、古しくてか弱い明かりの電灯が二、三個だけぼんやり照らす神社の中へ向かう。  勾配がキツい階段を、滑らないよう手すりに掴まって上っていくと、 「あっ、太智! 良かった、無事に抜け出せて」  鳥居の横に立っていた悠が、俺を見つけて安堵の表情を浮かべる。 「悠も来てたのか」 「僕が居たほうが、太智も安心するんじゃないかって、あの人が……」  チラリと悠が薄暗い社を見やる。俺もつられて目を向ければ、俺たちよりもひとつ頭ほど背が高い大人の男らしき人影が見えた。  あれがケイロたちが探しているマイラットと同化した人。  緊張しながら悠と一緒に近づいていけば、多彩な光球が一帯に現れて俺たちを照らし出す。  目の前に立っていたその人の顔を見て、俺は目を丸くした。 「司書の、舞野先生……貴方がマイラット……」  どこか申し訳なさそうに舞野先生は小さく頷くと、ぼやっとしていた冴えない顔を引き締める。それだけで顔つきが別人のように凛々しくなった。

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