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第61-1話なんで渦中の人になっちまってんの?!

 そりゃあ供給よりも需要が多くなり過ぎたら資源はなくなるよなあ。うん、社会科はあんまり得意じゃないけど理解できる。  でも人を探しに来たって、まさかこっちの人間をあっちの世界へ連れていく気なのか? ってことは、まさか悠を――。  こっちの人間で精霊が見えて、マイラットと懇意の仲。条件が揃いすぎている。  慌てて悠に振り向けば、なぜか俺と同じような勢いで悠がこっちを見てきた。 「秋斗さん、まさか太智を……っ?!」  ……え? 俺? ってか悠、舞野先生を下の名前で呼んでたのか。  ここで自分が候補に挙げられると思わなくて、俺はしきりに目を瞬かせる。  いやいや、俺は違うだろ。一応ケイロたち側の人間なんだし……と心の中で首を横に振っていると、 「ああ……太智君、いや、太智様。これよりウォルディア王国近衛隊長マイラットは、貴方様に忠誠を誓い、命を賭して守ることを誓います」  おもむろにマイラットが膝をつき、俺に対して首を垂れてきた。 「ええええっ?! いやいやいや、俺は違うって! そんなに頭良くないし、一応精霊は使えるけどケイロの魔力が体に入ってるからだし……そもそも、世界の命運を握っちゃうような重要なことを、安易に異世界の人間に託しちゃうのはどうかと思う!」 『王族の精を受けた、というのが重要なのだ。我らの世界は誰もが精霊を使役できるが、大半の者は使える属性がせいぜい一つか二つ。火と水という相反する属性を扱うこともできない……精霊王様に認められたウォルディア王家の血を引く者のみ、対極の精霊を扱い、数多の魔法を繰り出すことができるのだ』

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