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第61-2話なんで渦中の人になっちまってんの?!
狼狽えるばかりの俺に輝石が説明してくれる。
異世界ファンタジーはゲームやら漫画やらで馴染んできたから、言っている内容はすんなり頭へ入ってくる。だからこそ俺は混乱してきて頭を抱えた。
「え……? 俺、こっちの人間で王家の血なんか引いてないのに、火の精霊も水の精霊も使えたけど? 風の精霊とは意思疎通もできたし……」
『太智はケイロ王子と婚姻を成立させ、非公式だが王族の一員となった。そして王族の精を体に取り込み、その力を引き継いだ……加えて精霊に興味を持ち、その意思を尊重するという優しい心根の持ち主。これが最も重要なのだ』
「いや、優しいっていうより、物珍しいだけなんだけど……」
『我らの世界の人間は、精霊は当たり前にあるものと考え過ぎて、空気と同じ扱いになっている。空気に意思はない、だから精霊も同じだと決めつけている……我らと心が通じるなど夢にも思っていないのだよ』
確かに俺が精霊と意思疎通できると知って、ケイロたちは驚いていた。俺としては、こんな単純なことなのに……と不思議で仕方がなかったが、空気みたいなもんだと思っていれば素通りするのも当たり前かと思う。だって俺も空気にわざわざ興味もって交流しようなんて思わないし。
そこそこ事情を理解してきた俺へ、輝石が光を強めて訴えてきた。
『本当は我が力を回復させるまで追手から逃げ続け、この力を使わぬ道をウォルディア王家に検討してもらうことが我らの望みであった。しかし、まさか王族と契りを交わし、精霊の意志を汲める者に出会えるとは思いもしなかった……太智よ、どうか我を手にし、王家の者たちに自立の覚悟を促す手助けをしてはくれまいか? この通りだ』
他の精霊たちも各々に点滅して、輝石と一緒に懇願してくる。
俺、ただ巻き込まれただけの無関係な人間だったのに、なんで渦中の人になっちまってんの……?!
どう考えても事が大き過ぎて、安易に頷くことができなかった。
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