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第62-1話どっちも俺を考えてのこと
「そんなこと言われても……俺、一応ケイロの嫁だから、俺だけで決められないから。アイツにも関係あるんだし、まずは相談を――」
『婚姻が足枷となっておるのか? ならば解放しよう』
「へ? ……うわっ、まぶし……っ」
突然俺の左手から閃光が走り、思わず目を硬く閉じてしまう。
そして光が消えてまぶたを開けば――左の薬指にあった婚姻の証が消えていた。
『さあ太智よ、これで障害はなくなった。我に力を貸してはくれぬか?』
「ゆ、指輪が……まさか、これ、離婚成立……?」
『うむ。全精霊の承諾を得て交わされる婚姻は、全精霊が認めれば破棄が叶う。本来は各地にある精霊を奉る神殿へ出向き、報告する儀式を得て叶うことだが、今は太智に自由を与えることが精霊の総意……離縁しても一度身に宿した王族の精は残り、その力は消えん。もう一王族のみに縛られぬ』
俺はただの左手に戻ってしまった現実を、呆然と眺めてしまう。
強引に結婚させられて、離婚するためにケイロたちを手伝っていたのに……指輪が消えた左手が軽くてたまらない。
最初は心から望んでいたこと。でも、今は胸が激しく痛んで泣きそうになっている。
『……どうした? これが望みではなかったのか? 精霊たちから、離縁のためにケイロ王子に協力していると聞いていたのだが――』
「太智っ!!」
鳥居から名前を呼ばれて俺は振り返る。
そこにはいつになく必死な形相のケイロが白銀の剣を持ち、アシュナムさんとソーアさんを引き連れて駆けてくる姿があった。
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