113 / 121
第62-2話どっちも俺を考えてのこと
真っすぐに俺へ駆け付けようとしたケイロの前に、いつの間にか剣を手にしたマイラットが立ちはだかる。
「殿下には申し訳ないが、太智様をお渡しする訳にはいきません」
「退け、裏切り者! 俺たちの都合に太智を巻き込むな! 散々俺たちから姿を消し、不意をついて襲い、尻尾を掴ませなかったのに……太智が俺の弱みになると知って行動に出たのか? いつからそんな卑怯者に成り下がった、マイラット!」
「なんとでも言えばよろしい……私は主をお救いし、国の危機を回避するまで、この剣を下ろすことはできません。太智様は我らが希望……殿下の身勝手に付き合わされる枷を外した今、二度と太智様を縛り付ける真似はさせません!」
ケイロが痛みを受けたように顔をしかめる。そして俺を見やってから剣を構えた。
「指輪はなくとも、俺は太智を手放す気はない……狙いは何か知らんが、太智と輝石を返してもらうぞ!」
言うなりケイロがマイラットへ剣を突き出す。
――キィンッ!
咄嗟にマイラットが刃を弾き、すぐに反撃へと移る。
生の決闘。しかも、どっちも俺を考えてのこと。
思わず立ち尽くす俺の腕を悠が「太智、離れるよ!」と引っ張り、二人の戦闘から遠ざけてくれた。
ともだちにシェアしよう!