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第62-2話どっちも俺を考えてのこと

 真っすぐに俺へ駆け付けようとしたケイロの前に、いつの間にか剣を手にしたマイラットが立ちはだかる。 「殿下には申し訳ないが、太智様をお渡しする訳にはいきません」 「退け、裏切り者! 俺たちの都合に太智を巻き込むな! 散々俺たちから姿を消し、不意をついて襲い、尻尾を掴ませなかったのに……太智が俺の弱みになると知って行動に出たのか? いつからそんな卑怯者に成り下がった、マイラット!」 「なんとでも言えばよろしい……私は主をお救いし、国の危機を回避するまで、この剣を下ろすことはできません。太智様は我らが希望……殿下の身勝手に付き合わされる枷を外した今、二度と太智様を縛り付ける真似はさせません!」  ケイロが痛みを受けたように顔をしかめる。そして俺を見やってから剣を構えた。 「指輪はなくとも、俺は太智を手放す気はない……狙いは何か知らんが、太智と輝石を返してもらうぞ!」  言うなりケイロがマイラットへ剣を突き出す。  ――キィンッ!  咄嗟にマイラットが刃を弾き、すぐに反撃へと移る。  生の決闘。しかも、どっちも俺を考えてのこと。  思わず立ち尽くす俺の腕を悠が「太智、離れるよ!」と引っ張り、二人の戦闘から遠ざけてくれた。

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