114 / 121

第63-1話その場を治めるために

 俺たちの動きに気づいたアシュナムさんが、足先をこちらへ向けて走り出そうとするのが見えた。でも、 「太智殿、今お助けを! ……クッ」  周囲に浮かんでいる精霊たちの一部がアシュナムさんの前に飛び出し、暴風を吹かせて阻止してくる。  ソーアさんも来て対抗しようと「風の精霊よ――」とニ呪文を叫ぶ。けれど精霊の攻撃が治まることはなかった。 「魔法が使えない?! 神官の私に扱えないなんて……っ」 『我は百彩の輝石……すべての精霊を従わせ、我の意思に添わせることが叶う存在。覇者の杖がなくとも、近くの精霊たちを統べることなど造作もないこと』  俺の手の上で、さらっと輝石がチート発言してくる。  単体でもすごいんだな……と驚いていると、輝石から小さく吹き出す声がした。 『太智も我を手にしながら望みを言えば、精霊は同様に従ってくれるぞ? もっとも、今は精霊たちが太智に希望を見出し、心の底から慕っている。望みを口にすれば我が望むよりも強い力を出すだろう』  つまり俺もチート状態になったのか! でも、俺、ケイロたちともマイラットたちとも戦う気がないんだけど?!  精霊が俺の言うことを聞くなら、一旦戦いを止めさせよう――そう思って俺は大きく息を吸い込んだ。 「みんな、ちょっと落ち着け! 戦う必要はないから! ケイロっ、一回マイラットの話を聞いてくれ! マイラットも、話せば分かってくれるから! ……あああ、風のせいで声が届かねぇっ……風の精霊、ちょっと風止めろー!」」  全力で訴えてみても、ケイロもマイラットも風の精霊さえも俺の声を聞いてくれない。むしろお互いに頭へ血が上って、戦いがさらに激しさを増している。

ともだちにシェアしよう!