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第65-3話仮初めがガチになる瞬間

「急な離縁に腹立てるぐらい俺と結婚し続けたかったなら、どうして俺をケイロたちの事情から遠ざけようとした? 俺を隔離して、ペットみたいに可愛がりたかったのか? ……冗談じゃない」 「太智……」 「俺は精霊と意思の疎通ができるけど、それだけだ。ケイロが動いてくれないと、輝石の問題はどうしようもできないから……ここまで来たなら徹底的に巻き込めよ、俺を」  ケイロが俺の顔を真っすぐに見てくる。まだ悩んでいるのか、心なしか瞳が揺れている。  しかし、すぐに視線を強く俺に定めると、空を歩いて俺に近づいてきた。 「……左手を出してくれ」  言われるままに左手を差し出せば、ケイロはそっと手を取り、ゆっくりとあの呪文を唱えた。 「すべての精霊に告ぐ……今この瞬間の証人となり、婚華の祝福を我らが手に宿したまえ」  言い終わった瞬間、消えたと思っていた精霊たちが一斉に光り、俺たちの手へ集まって――一瞬、閃光が走る。  そして光が消えた後に残ったのは、互いの薬指に輝く指輪だった。 「このまま生涯、付き合ってもらうからな。面倒で厄介な世界に巻き込まれたと嘆いても、絶対に手放さないからな?」  ケイロが俺を抱き寄せ、顎を上向かせながら告げてくる。  唇が重なる間近、俺は短く呟いた。 「……上等」  俺たちは誓いのキスを交わし合う。  仮初めがガチになって、もう逃げられなくなったなあ……と頭で思いながら、俺の胸は嬉しくてこそばゆさが止まらなかった。

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