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第8話 ラブラブ誕生日
金曜日、誕生日当日。
学校で俺たち二人は女子生徒のほとんどからプレゼントを差し出されたが(まあ俺のは伊央利のおまけとしての義理だと思うけど)揃って受け取りを断り、身軽なまま放課後を迎えた。
いつもは帰りは別々なのだけど、この日ばかり一緒に帰り、途中スーパーで買い物を済ませ、おいしいと評判の洋菓子屋でホールケーキを買う。
まるで新婚カップルのような甘い雰囲気に、俺の頬はだらしなく緩む。
「なーに、ニヤニヤしてるんだ? 大和」
「ニヤニヤなんか……」
……してるけど。
「俺も幸せ。去年の誕生日には、一年後、大和とこんなふうにしてられるなんて思ってもみなかった」
「うん……」
俺もおんなじ。
伊央利への思いが叶う日が来るなんて、夢にも思わなくて……ただ苦しかった。
「こら、泣くなよ、大和」
「泣いてなんかない」
伊央利が困ったような顔をして俺を見つめる。
大丈夫、本当に泣いてなんかいないよ。ちょっとだけウルッて来ただけ。
俺たちは並んで歩きながらも、『兄弟』としての適度な距離をとることは決して忘れずに、今は二人きりの自宅へと帰った。
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