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第9話 ラブラブ誕生日2

「乾杯」 「乾杯ー」  リビングのソファに並んで座り、伊央利と俺はグラスとグラスを合わせた。  二人で作った夕食を終え、デザートのケーキタイムに突入したとき、伊央利が冷蔵庫から父さんのビールを拝借して来た。 「父さんに怒られないかな?」 「大丈夫。これくらい。でも、大和は慣れてないからな。あんまり飲むなよ」  双子で今日一緒に誕生日を迎えたというのに、子供扱いされて、少しムッとする。 「なんだよー。伊央利だっておんなじだろ? ほとんどお酒なんか飲んだことないくせに」 「転勤するまでは、俺は父さんの晩酌につき合わされてたから、鍛えられてるよ」 「えっ? なんで? なんで伊央利だけ?」  初めて聞く話に俺がびっくりしていると、伊央利は楽しそうに笑いながら答えた。 「おまえ、夜寝るの、早いじゃんか。俺と父さんが飲んでるときにはもう夢の中だろ」 「う……それはそうだけど……」  なんとなく仲間外れにされたような気がしてくやしい。  俺が少し拗ねていると、伊央利が優しく頭をポンポンしてくれる。 「ほら、せっかく俺たちの誕生日なんだから、そんな顔しないの」 「ん……」  伊央利の優しい手と言葉に、俺の機嫌はいとも簡単になおり、グラスのビールを半分ほど飲み干す。 「……苦い……それにお腹、熱い……」 「大和、おまえ顔真っ赤だぞ。酔うの早すぎ」 「酔ってなんかいないよ。ちょっとフワフワするけど」 「そういうのを酔ってるっていうんだよ。おまえ、もう飲むな」  伊央利はそう言うと、俺の手からビールのグラスを奪い、一気に飲み干してしまった。 「あー……」 「大和はケーキの方が好きだろ。チョコレートのプレート、やるから」  伊央利がケーキを切り分け、俺の方に、『おたんじょうびおめでとう いおり やまと』とホワイトチョコのペンシルで書いてもらったチョコレートのプレートを乗せてくれる。 「……ありがと」  確かに俺は甘党だから、ビールよりもケーキの方がいい。  チョコのプレートは最後まで取っておくことにして、生クリームがいっぱい乗ったスポンジケーキを口に含むと、その甘さが口の中に残っていたビールの苦みを消してくれた。 「……そうだ、大和にプレゼントがあるんだ」  伊央利は二杯目のビールを飲み終えたとき、思い出したように言った。 「あ、俺も伊央利にプレゼント、ある」  俺たちは、「せーの」で、プレゼントを交換しあった。

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