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第12話 抱擁
伊央利が軽々と俺を抱き上げ、二階へと続く階段を上っている。
頭がボーッとするのはビールの酔いの所為か、それとも快感の名残の所為なのか。
伊央利は自分の部屋のドアを開けると、俺の体をそっとベッドへと横たえる。
伊央利が上に伸し掛かって来て、そしてまた深いキス……。
口内を伊央利の舌で蹂躙されながら、同時に体中を大きな手でまさぐられる。
気づけば俺は一糸まとわぬ姿にされていて、伊央利の方だけが衣服を身に着けている。
そのことが寂しく、伊央利の着ているシャツを脱がそうと手を伸ばしたが、震えてしまって上手く脱がすことができない。
伊央利はすごく優しい瞳で俺のことを見て、いったん体を起こした。
伊央利の重みがなくなって寂しさがより増す。
いつもは感じる緊張や未知の行為への不安は、アルコールが鈍磨させてくれていて、俺はただただ伊央利ともっともっと近づきたくてたまらなかった。
そして伊央利も同じように感じてくれてたようで、性急な動作で自らが身に着けている衣服を全て脱ぎ捨てた。
……伊央利の裸はとても綺麗だった。
貧弱な俺の体と違い、大人の男を感じさせるような筋肉が程よくついている。
意外だと思われるかもしれないけど、俺は伊央利の全裸を見たことはなかった……いや。そりゃ幼い子供の頃は一緒にお風呂にも入っていた記憶はあるから別だけど。
思春期と呼ばれる時期になってからはお風呂は別々に入るようになったし。体育のプールの授業のときにも、伊央利の上半身裸が眩しすぎて俺は真っ直ぐに見れなかったものだ。
それが今、目の前にある。
しかも体の中心では伊央利の雄がそそり立っているという状態で。
「……大和、怖い?」
伊央利が聞いて来るのに、俺はゆっくりと首を横に振って応えた。
「伊央利……好き……伊央利……」
熱に浮かされたように大好きな兄の名前を呼び、その綺麗な裸体に触れようとしたとき、俺は力いっぱい伊央利に抱きしめられた。
「大和……大和……」
伊央利もまた繰り返し俺の名前を呼び、体にむしゃぶりついて来た。
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