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第21話 イチャイチャ
「父さんの転勤が伸びて、しばらく二人とも帰ってこなければいいのにな」
俺と伊央利は休日なのをいいことに、ベッドの中でダラダラしながら色んなおしゃべりをする。
「そっか。お父さんとお母さんが帰ってきたら、もう伊央利と一緒のベッドで眠れなくなっちゃうんだ……」
伊央利と一緒に眠ることはもうほとんど当たり前のこととなっているので、離れ離れに眠るのはとても寂しい。
俺が落ち込んでいると、伊央利が大胆なことを言った。
「大丈夫。父さんと母さんが寝たあと、俺がおまえのベッドへ忍び込みに行くから。おまえの寝こみを襲うから覚悟しとけよ」
「かく、覚悟って……?」
「ちゃんと声、抑えるとかさ。流石にあのときの声を聞かれたら、何の言い訳もできない」
「伊央利っ……」
生々しいことを言う伊央利に抗議をすると、伊央利は俺にじゃれついてきながらポツリと言う。
「大学に入学したら、二人で暮らそう。できるだけ父さんや母さんの力を借りずに生活してさ。俺、バイト頑張るから」
「伊央利……」
まるでプロポーズのような言葉に、涙腺が刺激され、涙が零れそうになったが、それをこらえて俺もまた伊央利に言葉を返した。
「うん。伊央利。俺もバイトする。二人きりの暮らしのために」
なのに伊央利は即刻首を横に振る。
「大和はバイト禁止」
「どうして!?」
「おまえに言い寄るやつが出て来るのが、絶対に許せないから」
「そんなやついるはずないじゃん。それを言うなら伊央利の方だろ。女の子にモテまくってるくせに……」
俺が唇を尖らせて文句を言うと、伊央利は何故か深々と溜息をついた。
「はあ……、やっぱりまったく自覚がないんだな。とにかく大和は勉強に励んで、それからもう少し家事ができるようになって欲しい」
「うっ……」
それを言われてしまえばもうぐうの音も出ない。
確かに器用な伊央利は家事をやらせても完璧にこなすが、俺は不器用で、何かしら失敗をやらかす。
「バイトとか言う前に、せめて鍋を焦がさずにカレーくらいは作れるようになって欲しい」
「…………」
伊央利の言葉が耳に痛くて、俺は黙り込む。
伊央利はそんな俺の髪をクシャクシャと乱すと、切れ長の目を微笑ませた。
「ま、まずは二人揃って大学に合格することが先決だから、午後は一緒に勉強な」
「ん」
そう二人きりの暮らしも、大学に合格しないことには叶わない。
勢いよくうなずいたと同時に俺のお腹がクゥと鳴き空腹を訴えた。
「そういえば腹減ったな。そろそろ起きて何か食おうか? 大和」
「伊央利の作ったチーズオムレツが食べたいな」
俺のリクエストに伊央利は端整な顔を微笑ませた。
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