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第23話 不穏な従姉妹の存在2
「伊央利、遅いわね」
さやかが首を傾げて呟く。
「……多分友達の買い物か何かにつき合ってると思うんで、遅くなると思います」
だから早く帰れ。
と言外に込めたつもりだったのに、さやかは全く意に介さない。
「それじゃ先に二人でティータイム始めてましょうか。そのうちに伊央利も帰って来るでしょ。あ、コーヒーか紅茶でも入れようか」
そう言っておもむろにさやかが立ち上がろうとしたので、俺はそれを慌てて止める。
「俺が入れますんで、さやかさんは座っててください」
さやかにはあんまりうちのキッチンには立って欲しくないのだ。
コーヒー豆はこの前伊央利とお気に入りのを買ったばかりなので、それを彼女に飲ますのはなんとなく嫌で、紅茶を入れることにした。
……はあ、俺ってやなやつ。
今の俺は嫉妬の塊のトゲトゲのハリネズミのようだ。
ダージリンティーを入れてリビングに戻る。
二人、黙したまま紅茶を飲む。どれだけ勧められても俺はさやかの手作りのクッキーには手をつけなかった。
さやかは気を悪くしたふうもなく、クスッといたずらっぽく笑う。
「……なんですか?」
「ううん。大和くんって本当分かりやすいなーって思って」
「どういうことですか?」
「大和くんってかなり重症なブラコンでしょ? だからあたしのこと気に入らない、違う?」
「――――」
いきなりそんなことを言われて、俺は一瞬言葉を失った。
そんな俺を見てさやかは今度は楽しそうに笑う。
「図星ね」
「違います」
俺がさやかのことを気に入らないってとこは当たっているけど、俺と伊央利の関係はブラコンなんて言葉では片づけられないもっと深いものだ。
「どこをどう見てもすごいブラコンよ? まあ伊央利みたいなお兄さんがいたらそうなっちゃうのも当たり前なのかもしれないけど。でも、大和くん、いい加減兄離れしなきゃだめよ? もう高校三年生でしょ」
ムッとした。
「……さやかさんには関係ないことです」
ヘタレな俺にしてはキツい言い方で言葉を放ったのだが。
「それが関係あるんだなぁ」
さやかはそう言い、真っ直ぐに俺を見据えた。
すごく嫌な予感がする。
綺麗にピンクの口紅を塗った唇がゆっくりとその言葉を告げる。
「だって、あたし伊央利のこと好きだもの」
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