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第24話 不穏な従姉妹の存在3
「なっ……!」
薄々察していたことだけど、さやか本人の口から聞かされると胸に苦いものが込み上げて来る。
「伊央利の双子の弟だからさー、あたしも大和くんのことは可愛いと思うけど。あんまりベタベタされると、やっぱり嫌なのよねー」
好き勝手に言われて腹が立ち、
「…………」
俺は無言でさやかを睨みつけた。
でもさやかはそんな俺を鼻で笑ってみせる。
「きっと伊央利も内心では大和くんに辟易してると思うわ」
「……そんなこと、さやかさんに言われる筋合いはありません」
俺と伊央利はお互いに兄弟以上の思いを抱き合っていると確認し合ったのだから。
誰にも言えない関係でも、決して許されない恋であったとしても、俺たちは真剣に思い合ってるんだから。
第三者に無遠慮にああだこうだと言われたくない。
「大和くんは本当にお兄ちゃんが大好きなのね」
さやかに今度は呆れたように笑われ、俺の苛立ちは頂点に達した。
「……さやかさん、帰ってください」
これ以上さやかと顔を合わせていたくないし、それ以上にさやかと伊央利を会わせたくなかった。
しかし、そんなときに限ってタイミング悪くことが運ぶ。
そう、玄関の扉が開く音がして伊央利が帰って来たのだ。
「ただいま、大和。遅くなって悪かった――何、さやか来てたのか?」
リビングに入って来た伊央利は俺とさやかの姿を見ると、少し表情を険しくする。
多分俺とさやかのあいだに漂う険悪な空気に気づいたのだろう。
「大和? 何、どうかした?」
「……どうもしない」
俺はうつむいてそう答えたが、伊央利には俺の心の屈託が分かったのか、更に表情が険しくなった気がした。
「いったい、何があったんだ? 大和」
伊央利は俺に聞いているのに、その質問に答えたのはさやかだった。
「何にもないわよー。あたしと大和くんでティータイムをしながら、伊央利の帰って来るのを待ってただけ。ほら、伊央利も鞄を置いて。今日はクッキーを焼いて来たのよ。三人でお茶しましょ。あたしお茶入れ直ししてくるから」
さやかはさっきまでの挑戦的な雰囲気などなかったかのようにご機嫌な様子でキッチンへと向かった。
「大和、顔色悪いぞ? 本当は何があったんだ?」
キッチンにいるさやかに聞こえないように伊央利が声を潜めて聞いて来る。
俺はふるふると首を横に振って何も答えなかった。
さやかがすぐ近くにいる状態では話をしたくなかったのだ。
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