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第29話 弟からのキス
大和の抵抗を封じ込め、唇を重ねたまま彼が落ち着くように背中を撫でてやる。
徐々に大和の体から余計な力が抜けて行き、俺に体を預けて来る。
ゆっくりと唇を離したときには、大和は随分と落ち着きを取り戻し、俺の腕の中で小さくしゃくり上げることを繰り返していた。
俺は今度は大和の額にキスをしてから、口を開いた。
「まずはごめん、あれは俺のミスだ」
「……ミス……?」
大きな瞳を涙でいっぱいにしながら大和が俺に聞き返して来る。
「油断したんだ。まさかさやかがあんな行動に出て来るとは思わなくて」
「……っ……」
またそのときの場面を思い出したのか大和の目尻から大粒の涙が零れた。
俺は弟の涙を唇で吸い取ってやってから、言った。
「あれは、さやかが一方的に唇を押し付けて来ただけだ。キスって言うのはお互いが思い合って初めてキスって言うんだって思うから」
「伊央利……」
真っ赤なうさぎさんのような目で大和が俺を見つめて来る。
「俺は大和以外誰も好きになれない。分かるだろ? 心変わりするような半端な思いで双子の弟を好きになんかならない。それは大和も同じだって信じたい」
「……伊央利……」
大和が強く俺に縋りついて来た。
「俺も伊央利とおんなじ……でも、さっきのはやっぱりショックだったんだ……」
「うん……」
大和が華奢な指で俺の唇をそっとなぞってから、言う。
「俺、さやかさんが許せない……伊央利の全ては俺のものだから」
「ああ」
そして大和は俺の唇に自らの柔らかな唇でキスをした。
セックスに関しては大和は基本的に受け身だ。
俺が、「キスして欲しい」とか、「大和も触って」とか強請れば恥ずかしそうにしながらもしてくれるが、自分から積極的に、というのはほとんどない。
でも今、大和は自分の方から俺にキスをしてくれている。
まだまだたどたどしいキス。
でも俺は大和がいつになく積極的に俺に迫って来てくれることでかなり欲情していた。
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