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第37話 Side.Yamato 信じられない
何が何だか訳が分からなかった。
どうやら俺は少し眠っていた(気を失っていた?)ようで、気づけばいつの間にか伊央利に体を支えられている。
なんだか寒いと思ったら、俺の制服は乱れて、肌がむき出しになっていた。
???
本当に訳が分からない。
でも一番意味が分からなかったのは、伊央利がさやかに向かって言った言葉だ。
『やっぱり、おまえの狙いは大和だったんだな』
いったいどういうこと?
俺は、すごく怖い顔をしてさやかを睨んでいる伊央利の服を引っ張った。
「伊央利? 一体何がどうなってるの?」
俺の問いかけに、伊央利はようやくさやかを睨みつけるのをやめて、乱れた俺の制服を整えてくれながら、低く鋭い声で呟いた。
「……さやかの好きなのは俺じゃなくて、大和、おまえだったんだよ」
……え?
「ええ!?」
まさかそんなこと。
「前からずっと怪しいと思ってはいたんだ。さやかは何かとおまえのことを気にかけてたし。だからおまえとさやかはできるだけ二人きりにしないようにしてた」
「でも、だって伊央利……」
そんなことあるわけない。
だってさやかははっきりと俺に伊央利のことが好きだって言ったし、それに。
にわかには信じられない俺に、伊央利はさらに言葉を続ける。
「……さやかが好きなのは俺、みたいな展開になって、大和を狙ってるっていうのは俺の思い過ごしだったかなって、油断してたらこうだ」
「で、でもさやかさん、伊央利にキスまでしてたじゃないか……。あんなこと好きじゃない相手になんてできない……」
もう二度と思い出したくもない場面が頭の中で再生される。
茫然と呟く俺に、さやかは不敵な笑みを浮かべて信じられないことを言った。
「ふふ……、大和くんと間接キスね」
「…………」
俺はまだ信じられなかった。
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