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第43話 Side.Yamato Iori 二人の将来

 伊央利と大和が揃ってW大に合格してから数週間後、父親と母親が転勤から戻って来た。  久しぶりの一家団欒の夕食。  テーブルの上には母親の手料理のご馳走が並んでいる。  それを見て二人は顔を見合わせこっそりと溜息をつく。  伊央利も大和も、そのご馳走を素直にうれしいとは思えなかった。  だってもう二人きりで食事を作り、二人きりで食べることにこの上ない幸せを感じるようになっていたから。  今の二人の気持ちとしては、新婚の自分たちの元へ親がやって来たといった感じだろうか。  食事が終わり、母親がデザートのアイスクリームの用意をしているとき、伊央利はおもむろにその話を口にした。 「父さん、母さん、この前もちょっと電話で話したことなんだけど、  大学に入学したら俺と大和、二人で暮らしたいんだ」  伊央利の本心としては、『大和を俺にください』と言いたいのだが、まず冗談だと思われるだろうし、本気だと分かったら両親は卒倒してしまうかもしれない。  大和は伊央利が電話で時々、二人暮らしのことに言及していたことは知っていたが、両親に直接、はっきりとその話をしたことで緊張の極みにあった。  ……うわ。すごくドキドキする。父さんや母さんはなんて返事をする……?   許してくれるかな、俺たちの二人暮らし。  大和は自分の頬が赤くなるのが分かった。  伊央利の申し出に最初に反応したのは、アイスクリームを皆に配っていた母親だった。 「そうねぇ……。W大だったらギリギリここから通えなくもないし、どうしようかとお父さんとも話し合ったんだけど……」  そのあとの言葉を父親が繋ぐ。 「でも、まあ、二人がそうしたいって言うんなら、許してやろうかっていう結論に落ち着いた」  父親の言葉に大和は安堵し、心の中で快哉を叫んだ。  それは兄の伊央利も同じで、大和の方を見てホッとしたように微笑む。 「ありがとう……父さん、母さん」  伊央利と大和は二人揃って両親に礼を言った。 「俺たち二人できちんとやっていくから」  伊央利が改まって言うと、母親がコロコロと笑う。 「やーね。伊央利ったら。まるで結婚の挨拶をしてるみたいじゃないの」  伊央利と大和はドキッともギクッともする思いを味わった。  父さんや母さんを欺いているのは心苦しいけど……でも、それでも。  二人きりで暮らせるという事実がうれしくて、伊央利と大和はテーブルの下でこっそりと小指を絡めた。

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