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第5話
とりあえず本田の部屋で順番にシャワーを使い、2日分の仕事の垢を落とすとずいぶんと解放された気分になった2人はさっそく買ってきたビールとつまみをあけた。本田のコレクションの中から3年前に当たったビリヤードの映画を選んでビデオデッキに入れ、小さな音で再生した。そんなに壁の薄いマンションではないが一応近所に気を使ったのだ。2週間ぶりのビールと次の日休みだという開放感は何とも言えない幸せ気分をもたらした。要するにハイになっていたのだ。
「俺この俳優好きなんですよねー」
少しブカブカの本田のスウェットを着込んだ秋元が指さしたのは今人気絶頂の若手二枚目俳優ではなく、初老のベテラン俳優の方だった。
「なんかすっごい色気があるっていうか、理想の男っていうか。この人の映画全部見てるんですけど、脱獄のやつとか本当に好きで。この映画も25年前の前作の方が好きなんですよ」
そこでなんとなくピンときた本田が
「お前ビリヤードやけに上手かったのそれで?」
と聞けばバレたかという顔をして
「この映画がヒットしてプールバーとかビリヤード場とかたくさんできたじゃないですか。大喜びで練習したんっすよ。うわ、これ恥ずかしいっすよね」
酒も回って恥ずかしそうに真っ赤になっている秋元の、サイズの合っていない襟ぐりから覗く鎖骨に目を奪われながら
「いいんじゃないの? 趣味のきっかけなんてどんなところに転がってるかわかんないし」
6本目の缶をあけながら言えば
「そういえば本田課長、映画以外に趣味とかあるんっすか?」
聞かれ、少し考えて
「スキーは少しはするけど今年は行けそうにないな」
「それって例の映画見てっすか?」
これも数年前に大ヒットした邦画のことを言っているのだとわかったが
「いや、もっと前からやってる。今2級程度だけどな、それより上を目指す気もないし」
「2級って全然少しのレベルじゃないっすよね。謙遜しすぎなのずるいわー」
口をとがらせてしなだれかかるように凭れてくるのを押しのけようとした本田は秋元の体の異変に気付いた。
「おい。何を元気になっちゃってるんだよ」
指摘されて自分の股間を見やった秋元は
「あー、なんかすいません。でも徹夜のあととか元気になっちゃいません?もう自分ではどうしようもないっつーか、すいません、なんでだろーなー。もう全然おさまらないし。課長はこんなんならないんっすか?」
言いながら本田の股間に手を伸ばしてきた。
「あっ! ちょっ! ばかっ! やめろって! お前もう酔っ払いすぎだろ! トイレ貸してやるからさっさと抜いてこい! んでもってもう寝ろ!」
身をよじって避けようとするがしつこく触ってくる手に次第に本田の方も反応し始めてしまっている。
「ふふっ。課長いいっすねー。俺のも一緒に気持ち良くなりましょうよー」
嬉しそうに言う秋元の目は酔いのせいなのか普段とは違う光を湛えている。あっけにとられているうちに馬乗りになられスウェットのズボンからモノを取り出されると秋元のモノと一緒に扱かれてしまった。先走りでぬめる二本の棹を意外と大きな秋元の手のひらがひとまとめに擦り、予想外の気持ちよさに本田は動揺した。そうして酔っ払っているからなのか快感に理性が負けてしまったのか、結局本田は大した抵抗もしないままあっけなく秋元の手の中に欲情を吐き出してしまったのだった。ハアハアと荒ぶる息が整わないうちにどさりと本田の上に身を落としてきた秋元は次の瞬間にはひどく満足げな顔をしてスヤスヤと寝息をたて始めた。
「なんなんだよコイツ」
軽く腹を立てながら秋元の躰をどかし、ふたり分の精液で汚れてしまっている秋元の手と股間を濡れタオルで拭いてやる。
「何やってんだ俺は…」
どうしようもない虚無感に襲われながら自分の身もきれいにし、秋元に布団をかけてやると食い散らかしたものや空き缶などはそのままにして自分も寝床にもぐりこんだ。
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