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7-可憐な唇

翌朝、やはり清比古は痣を確認し、普段通りに学校生活を過ごし、寮に戻った。 すぐに一人で入浴を済ませ、俺も早く風呂をもらうようにと強く勧めてくる。 今日も痣をつけて欲しいとねだられるのだろう。 清比古の小さな躰に残る無残な痣を見るのが苦痛だった。 しかし痣をつけている間、清比古の躰を好きに(もてあそ)んで、満たされた気持ちになってしまっていたのもまた事実だ。 清比古の全てにふれる事を求められ、その通り清比古の陰茎にまでふれた。 あの淫猥かつ愛らしい清比古を壊し、従属の記憶を『俺』で塗り潰し、『俺』の好きに作り変える……。 それはいつしか、のがれ難い誘惑となっていた。 しかし、清比古にそそのかされるまま、その躰を味わい、昂ぶる自分がどうにも情けない。 せめて少しでもその時を遅らせようと自習室に行き、勉強に励む。 だが集中出来るはずもなく、自習室を退出して級友のいる部屋の談話に邪魔してみたりもしたが、部屋で一人待つ清比古の様子が気になって仕方がない。 結局ほどなくして部屋に戻ると、清比古はすでに布団を敷き、その中にいた。 清比古から目をそらし、寝間着に着替える。 清比古の誘惑からも、自分の欲望からも逃れられないなら、あの端の重ね合わされた布団の中に行くしかないのだ。 壁に据え付けられた私物入れの戸を閉め、小さなため息をつく。 その時、気配を感じた。 布団から抜け出た清比古が背後から俺の腰に抱きついてくる。 そしてすぐに前に回りこみ、しゃがんだ。 「清比古?」 清比古は全裸だった。こんな寒い中、痣だらけの肌をさらして、一体どういうつもりだ……。 清比古の手が俺の腰に伸び、顔が近づく。 「ぁ……?っっっ!」 たった今寝間着を着たばかりの下半身が外気にさらされ、ソコを温かく湿った感触がおおった。 「清比古、何を……!」 「どうして早く戻って来てくれなかったんだ」 いつもは花びらのように可憐な唇が大きく開かれ、口いっぱいに俺のモノを吸い込んでいた。 「な……」 戸惑いを置き去りに、俺の陰茎が清比古の口内でむくむくとその体積を増す。 チュバッ……。 優しく吸われただけで心地よく、腰が抜けそうになる。 もちろん俺には初めての体験だった。 頭をつかんで深く押しこみたい衝動に駆られた。しかし、唇をすぼめ抜き差しされれば、たまらぬ快感が走って自ら動くどころではない。 ねっとりと口内の粘膜がからみつき、ズクンズクンと脈打つような尿意にも似た熱い疼きに襲われる。 「やめ……こんな…くっ……出るから離せ」 唇で圧迫されながら、敏感な先端をチロチロと細かく舌先で舐められてはひとたまりもない。 「ぁ……く」 一分たたずに清比古の口に精液を放出していた。 清比古は平然と喉を鳴らし、それを飲みくだす。 なぜ、いきなりこんな……。 甘えた素振りでこんな行為に及んだ清比古に、俺は怒りを覚えていた。 いや、清比古に男を喜ばせるための技を仕込んだ『誰か』にだろうか。 怒りに任せ、髪を掴み、まだ萎え切らぬ陰茎を再び口にねじ込んだ。 「清比古、そんなに男の精液を飲みたかったのか?」 グッと突けば、喉をやられた清比古がグフとむせた。 苦しそううな様子に一瞬怯んだが、そんな様子はおくびにも見せず、清比古の幼い顔面に股間をすりつける。 「う……うぐ……」 苦しそうな顔で呻き、俺の太ももを手で叩いた。 先ほどまで楽しげですらあった口淫を嫌がる清比古に、ようやく溜飲が下がった。 息もできぬほど押し込めていたモノをズルリと引き抜く。 「ゲホッ……ゲホッ……」 むせた清比古が、口のまわりを唾液で濡らしながら板張りに伏せ、華奢な肩を上下させる。 「どうした。君が咥えたがったんだろ」 苦しげな清比古を可哀想に思いながらも、俺はののしりの言葉を止めることが出来なかった。 「ごめん……」 赤い痣だらけの躰をさらに小さくし、悲しい表情で俺を見上げる姿が憐れで、胸をえぐられる。 けれど、俺の罪悪感はすぐに驚きに変わった。 「彬……もう大丈。たとえ息が止まっても拒んだりしないから」 清比古が再び腰にすがりつき、口いっぱいに陰茎を咥え、舐めしゃぶり始めたのだ。 「お願いだ。さっきみたいにしてくれ……彬で僕を無茶苦茶に壊して。壊して彬……壊して」 猛る肉棒を頬張ったまま、ムグムグとくぐもった声で乞う。 俺は必死な清比古に一抹の悲しさを感じながらも、怒りや性的刺激がないまぜになった興奮に流されてしまっていた。 両手で幼い顔を掴み、腰がぶつかるのも構わずに温かく滑る口内をガンガンと突く。 そして絡みつく舌と滑らかな口腔に怒張をすりつけ、思うさま快感を得た。 「はぁっ……清比古……っはぁっっ……く……」 現実感がない。 たまに歯がぶつかり痛むが、そんなことは構っていられなかった。 息が弾み、熱を持った肌に汗がにじむ。 「はぁっっ……!はっくっ……」 性器を思うさま舌や上あごにすりつければ、清比古の口が発しているとは思えないグポグポとおかしな音がたつ。 興奮と快感で脳が焦げ付きそうだ。 腰をぶつけられ、ただの道具となって耐える清比古の歪んだ顔が見えているのに、それさえも俺の快感を増した。 「ふぐ…ぐぐぅっ……」 苦しそうに呻く清比古の、俺の陰茎で丸く膨らむ頬をいたわるようになでると、嬉しそうに目尻を下げて太ももにすりついてくる。 「君を人形にした奴にもこうやって甘えたのか?」 俺の問いに清比古の顔からすっと表情が消えた。 「そう……だね。僕は淫乱だから」 くぐもった清比古の声が暗い。 昨日までの清比古なら、このような時に媚びた作り笑顔を見せていたのではなかったろうか。 「清比古は男の性器を咥えるのが好きなのか?」 「……そうだよ……僕は……」 肯定し、俺の陰茎を舐めしゃぶりながら、目は泣きそうに揺れていた。

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