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10-ほんとうの快楽

「ああ……ぁきら……やめて」 清比古の仰向けの肩に膝をぐっと押し近づけると、尻に舌をはわせながら頬をゆっくりとなでた。 「わかるか?作られた人形の顔は剥がれ、粉々に砕けてしまっている」 清比古の目に浮かぶ大きな雫が、決壊してまなじりを伝った。 「ほら、この不安げな表情は間違いなく清比古の顔だ。……次は偽りの快感を覚えた人形の躰を壊そう」 清比古が何か言いたげに唇を開閉させる。 しかし、言葉を発することはなく、俺を拒む指から力が抜けた。 「ぁあ……ぁ」 舌による愛撫に控えめに声を漏らす。 さっきまで拒んでいた指が、俺の舌に絡み、自らの窄まりをなぞっていた。 その指をチュバッっと音を立てて吸えば、ビクビクと細い腰が跳ね、俺の目前で陰茎が踊り蜜を垂らす。 「ぁっ……ぁああん」 大きく喘いで、耐えかねたように清比古が俺の頭を掴んだ。 それでも舌で愛撫を続ければ、清比古が躰をよじって逃げるように後ずさりする。 「逃げるな」 「っっっっっ……ご……ごめんなさ」 「今の喘ぎ声は偽物か?」 「え……?」 「気持ちいいフリをする必要はない。嫌ならそう言ってくれていいんだ。けど、気持ちがいいなら逃げずに我慢しろ。俺に壊されたいんだろ?」 「………ん」 小さく頷いた清比古が、両手で自らの尻を割って窄まりの内側の敏感な桃色をさらす。 「お願い。壊して……」 涙目の懇願にカッと血が沸騰した。 ……けど、まだだ。 まだ早い。 再びそこに舌を埋めた。 「……っく……う……うう……ぁああっぁんんぁあああ」 声を堪えようとして堪えきれず、俺の肩に暴れる足をすりつける。 「ぁあ……こわ……壊れるっ。……違う……ああっっ………こんなはずじゃ。こんなはずじゃないんだ……こんな風に快感を覚えてしまうなんて。彬、どうして?酷くしていいのに…僕なんか……僕なんか…ふううっっっ!!!!」 舌先が千切れそうなほど菊門が絞られ、緩んだと思ったらヒクンヒクンと窄まる。 「清比古、気をやったのか?」 「っっっっ……違う……違う」 ならば、そういうことにしておこう。 ずいぶん緩んだ菊門に唾液を垂らし、指を潜り込ませる。 窄まりから内壁へ。そのツルツルとした心地よい肉をなでると、清比古が「ひああ……ん」と愛らしい声をあげた。 「ここが、いいのか?」 「……」 ぎゅっと目をつむり、恥ずかしそうに顔を背ける。 慎重に二本指を差し込み優しく割り開いた。 桃色の穴につっと唾液を垂らすと、クパクパと入り口が収縮し、溢れた唾液が尻を丸く伝う。 ……まるで俺を欲しがり、よだれを垂らしているようだ。 指を含んだまま、穴がキュキュと開閉するたび、細い陰茎も揺れる。 「も……早く……彬」 その愛らしい様を眺めながら、細い腰をなで、指を抜き差ししていると、清比古がじれた。 「んっぁっ……もういいから!ココに……彬が……欲しいんだ!僕を良くする必要なんかないから、とにかく……欲しい」 いつも物静かな清比古がまるで駄々っ子のようだった。 早く望む形で壊されたいのか、快感に耐えきれなくなったのか。 切実な声に押され、俺は清比古の尻にさらに唾液を飲ませると、熱くたぎりドクドクと脈を打つ自らの怒張を清比古の穴に添えた。 「清比古、いくぞ……」 余裕ある態度を見せようと心がけるが、緊張で頭が痺れ、みっともないくらい手が震える。 ツルリと、意外なほどすんなり入っていく。 「…っっ」 敏感な先端に、初めての感触。 清比古の温かな肉に締めつけられ、興奮で視界が赤く染まる。 もっともっと味わいたいと、グッと押し込んだ。 「んっぐ……」 清比古の苦しげな声に怯んだ。けれど慌てて引くと……。 「ぁあっ……」 女のような甲高い声を出し、身をよじる。 今度は慎重に抜き差しをする。 すると、やはり清比古が甲高い声を上げ、こらえるように身を固め、何度もよじった。 作り物の媚びた声によく似てはいるが、演技ではできない震えがある。 すでに散々菊門の快感を高められていた清比古には俺の拙い動きでも充分のようだった。 そして俺が多少動きに慣れてきた頃……。 「っっっっ…………」 清比古の声と動きがピタリと止まり、中がヒクヒクと動いて締め付けてきた。再び気をやったようだ。 稚児役は何度でも気をやれると聞いている。 俺は、心地いい清比古の菊門を今度は背後からむさぼった。 「はぁっ……はぁっっ……」 夢中で腰を振る自分の荒い息が妙に耳につく。 そうか、清比古の声が小さくなったのか。 上気した頬に手をやって振り向かせ、赤く染まる唇を吸った。 「清比古、後ろからでは()くないか?」 口ごもった清比古の言葉を促すように、軽く唇を食みながら、中に昂りを擦り付ける。 すると、清比古は快感に鼻を鳴らしながら、泣きそうに眉を寄せた。 そして堤防が堰を切ったように言葉が溢れ出す。 「……どうして……ぁきら……どうして?酷くしてよ。僕は……違う。淫乱じゃない。こんなこと、気持ちがいいわけないんだ!違うんだ、彬!本当に違うんだ。ぼくはっっ僕はこんなじゃない!!」 先程は、開き直ったように『本当に淫乱だったようだよ』などと言っていた清比古が、声を詰まらせそれを否定する。 「清比古、落ち着け」 俺の言葉も耳に入らないようだ。 「違うんだ……ぁっぁん……!」 落ち着かせようと背後から抱きしめると、窄まりをヒクつかせ大きく喘いだ。 再び気をやったのか、ぐっと身を固めたのち、脱力する。 そして清比古がか細い声を出した。 「僕は……。僕は……やはり男を誘う淫乱な子供なんだね」 「清比古……」 「汚らわしい唾棄すべき人間であるにもかかわらず、取り繕い、君を騙して友人の座に収まって……ごめん」 「何を言ってるんだ。君は思慮深く、謙虚で、友人となれたことを俺は嬉しく思っている」 「僕は壊してと言いながら……」 スッと清比古の視線が遠くなる。 「壊して、て言うときながら……僕は君のイチモツをいやらしか尻穴にハメたいだけやったんやなぁ。あん人ん言う通り、僕にはそれしか能がなか。どげえけよか学校行ってん、生まれついてん素質は変わらんて、本当や。ほんなこて僕が淫乱やったんや」 「……」 「好かんかった。あん土蔵ん中。バラバラの死体みたいな木偶の手やら足やらあって。嫌やて思うとったのは、それがえず(怖)かっただけや。おいちゃんは本当んことば言うとった。僕はいやらしかコトば好きな淫乱な(わらし)たい」 「そんなことはない。さっき君は過去に怯えていた。決して……」 「彬、ごめん。君がこげなこと嫌がっとるって、本当は気付いとった。ばってん……」 清比古の瞳が再び俺を捉えた。 「僕は最後のわがままくらい許されるんじゃないかと自分勝手に思ってしまっていた。高校での男色なんてよくある話だと、君はすぐに忘れてくれるに違いないなんて……」 俺を置き去りにして、清比古が一方的に言葉を重ねる。 「さっきまで、自分でも君に壊されたがってるんだと本気で思っていたんだ。君の友人として、自分は相応しくないと知りながら、君の男らしさや快活さに憧れ、優しさに甘えてしまっていた。けど、僕はおそらく男に飢えてただけなんだ。あの人にもそう言われた。『高校に行ってん、どうせすぐ男を漁る』って。『手前ぇはガキのマラで満足できる躰やなか』っち。『チンポが欲しゅうなったらすぐ帰れ』って嗤うち。()うてやるち、一生俺のマラを咥えてればよかち……そんためにお前は生まれてきたんやち……」 「そんな事はない!清比古……!」 自らの言葉で自身を傷つける清比古の口を、俺は唇で封じた。

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