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第43話 「隠す」

「……きらい、だ」 涙を浮かべて ぼろぼろと零して もう目が溶けそうなくらい流したくせに 「大嫌い」 またこうやって、自分を追い詰める 違うのなんて、わかってる 自覚もしてる それでも言えないのは、 「目、赤いな。……泣いた?」 「、んーん、泣いてないよー」 「……そっか」 「うん、だいじょーぶ」 優しい優しい、俺の゙友達゙ 鋭いから、たまに嫌になる そばに、いたくない、いて欲しくない そんな自分が、すごく嫌いだ 「ね、今日お昼何食べよっか」 「今からお昼の話?」 「だって大事でしょー!お昼ご飯!」 「ふはっ、そーだね、何食べようか」 あからさまに話を逸らしたことも、わかってるのに 知らないフリして、俺に合わせてくれる 俺の、優しい、゙友達゛ 「俺はねー、んー、今日は親子丼の気分!」 「いーね、親子丼。久しぶりに食べたいかも」 お昼なんて、少し先の話でさえ、一緒に出来ることが嬉しくて 散々泣いたくせに、また涙が零れそうになる 優しい俺の友達は、鋭いから 俺の気持ちがいつかバレるんじゃないかって怖くて でも一緒にいたくて 気持ちを消せるようにって、毎日思ってもないことを繰り返してみるけれど その度になくなるのは俺の体力と気力だけで 諦めることを諦めたくなる いっそこの気持ちを打ち明けてみたら 君は受け止めてくれるだろうか 優しい君のことだから、拒絶はしないだろうな 悲しそうに、ごめんって言うのかな もしかしたら、 なんて、ありえないことは考えちゃいけないね 「……大好き」 嫌いなんかじゃない ずっと前から、自覚もしてる それでも言えないのは、一緒にいたいから。 「何か言った?」 「……んーん、何も」

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