38 / 50

第38話

「後悔は、してない」 「……本当に?」 「うん、本当」 「……ふーん」 「何その返事。聞いてきたのそっちじゃん」 クスクスと笑う、目の前の人 「別に」 「ふーん」 後悔はしてないと、すっきりした顔で語るこの人は 何を考えて、何を思って その結論まで至ったのだろうか 後悔゙ばしていないと語るこの人は 何をしているのだろうか 感謝でもしているのだろうか、あんな奴に 泣いて、喚いて、後悔したと叫んでくれれば もっと、何か、ほかの言葉をかけてやれるのに どうして、貴方は そんなに強い 「幸せなら、いいんだよ」 「……誰のことを言ってるの」 「あいつ以外に、誰を思うの」 後悔ばかり、している 今だって、余計なことを言った そんな顔させたいわけじゃないのに ごめんなさい、笑って そんな悲しそうな顔しないで 「……願うのなら、自分の幸せにしてよ」 「今は無理かなぁ……」 「何で」 「今幸せを望むと、さっき言った言葉が嘘になっちゃう」 ゙後悔は、してない゙ 嘘に、してしまえばいいのに 「……これからも見かけることもあるよ」 「そうだねぇ」 「……隣にいるのは別の人だよ」 「うん、そうだね」 「、こっちを見ることは、ないんだよ」 「……知ってる」 傷付けるだけだって、分かってる でも、それでも自分の幸せを願って欲しかった 望んで欲しかった そうしてくれれば、いくらでも頑張るのに 諦めてたら、何も出来ない 役に立てない 笑って、くれない 本当の笑顔が、見れない 「それでもね、あいつの笑顔が見たいから」 ああ、 「笑顔にさせられるのが自分じゃなくても、別にいいんだ」 一緒だ 「幸せで笑ってくれてるなら、いいんだ」 考えてる事は、一緒だった 好きな人の笑顔が見たい ただそれだけ 俺はこの人の笑顔が見たかったけど、 この人が見たいのはあいつの笑顔だった だから幸せを願う 自分の幸せは二の次で ああ、どうしよう 凄く悲しい 寂しい 貴方の幸せを願いたいのに こっちを向いて、だなんて 伝える気もないのに烏滸がましくも思う自分が 酷く醜くて、この人の傍から離れたくなった でもやっぱり、俺は弱い 「……ふーん」 明日もきっと、俺はこの人の傍にいる いつかこの人に拒絶されるまで できれば笑顔が見れる時まで

ともだちにシェアしよう!