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第2話
東城と暮らす家に戻ってきてから、広瀬はほとんどの時間を屋敷内で過ごしていた。
体調がすぐれなかったせいもある。考えこむことも多く、家の中でじっとしている方が楽だったのだ。
夜の眠りは浅く、日中も、自分の今までのこと、殺された両親のこと、東城のこと、実験のこと、これからの生活のこと、グルグルと同じところばかり繰り返しなぞっていた。
考えても無駄なことも、無駄だと自分に言い聞かせながら、止めることができなかった。
東城はというと、毎日仕事から帰ってきて、広瀬が自宅に大人しくいるので、いたく機嫌がいい。
そして、体調が悪そうにしている広瀬のため、といっては、滋養のありそうな食べ物やグッズを手あたり次第に買ってきている。
ドラッグストアや通販で売っているサプリメント、すっぽんとかヘビ入りの酒のような伝統的な強壮系の飲食物だけでなく、科学的でないかなり胡散臭いものまでもだ。
さらに、宗教心は全くないくせに、お守りや護符や十字架がついたロザリオまで買ってくる。
広瀬に黙って、寺や神社に依頼して、お祓いやおまじないとかしてもらってても驚かない。
本人は自分を合理的な現代人だと思っているのだが、実は、超常現象や神頼みを信じているのだろう。
彼の買い物が二人の衝突の種にならなかった理由は、広瀬が食べなかったり使わなくても全く気にしないからだった。東城は、自分が良いと思っていることにお金を使うだけで、効果がでると思っているようだった。
そんな毎日を送っていて、最近やっと体力が戻ってきた。夜、深く眠ることができるようになり、天気のいい日は敷地内も散歩するようになった。
東城も、広瀬が元気になってきたのも嬉しいらしく、今度の休みに車で遠出をしようか、といった話もし始めている。体力回復には自分の貢献が大きいと思っているのかもしれない。
広瀬自身は、石田さんに健康によい食事を毎日たらふく食べさせてもらったおかげと思っている。
そんな、何をするでもなく、ぶらぶらと過ごす日常が続いていた。
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