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第4話

高田のメッセージを返信したその夜、徹夜で飲み続けての仕事でさすがに疲れたのだろう、東城は早めに帰ってきた。 一緒に夕食をとりながら、広瀬は、今日、高田から連絡があったことを東城に伝え、メッセージを見せた。 東城は、わずかに怪訝そうな色をにじませた。 「高田さんには、結婚式で会った」と彼は言った。大井戸署に関係のある人が大勢呼ばれていたのだ。退職した高田も呼んでいたのだろう。 「宮田も来てたからな、結婚式でお前の連絡先を宮田に聞いたんだな。そういえば、宮田が挨拶しに行ってて、長いことヒソヒソ話していたの見た。口の軽い奴だ」 高田は宮田にとっても元上司だ。そこで広瀬の近況や電話番号を聞かれたのだろう。 高田に言われれば、宮田も答えざるをえない。それは東城にもわかっていることなのだが、少しいまいましそうだった。 「俺も、高田さんに挨拶したよ。あまり話す時間はなかったけど、近況を聞いた」 「高田さん、今、どうされてるんですか?」 「友達の会社で働いてるらしい。警備コンサルとかなんとかいってたな。内実はよろず相談所兼用心棒みたいなもんだって言ってた。冗談めかして話してくれた」 警察を辞めた後に着ける仕事は多くはない。長年警察一筋ならなおさらだ。 「自分のこと話すよりも俺のことを色々きかれた」と東城は言っていた。彼も高田のかつての部下だ。東城も高田のことを尊敬しているのだ。 「そう言えば、経産省の仕事のこととか、警視庁に戻らないのかとか、家族は元気かとか、今どこに住んでるとか、根掘り葉掘りだったな」 あの時は違和感なかったけど、今思うと、なんであんなに俺のことを聞いてきたんだ、と東城は訝しんでいる。 「俺のことは、聞かれましたか?」 「いや、何も。全く聞かれなかったし、話にもでなかった。そういえば、それも変だな」 東城が経産省に出向になったのは、広瀬の起こした事件に巻き込まれたせいだ。 「お前のこと宮田から聞いてたんなら、俺にも、なにか言ってもよさそうなものなんだが」と東城は言う。「かすりもしなかった」 彼は、高田のメッセージを読み返している。必要最低限のことを丁寧な文章で書いているだけだ。 推定できる情報量は少ない。 「高田さんが、お前に連絡してくるって、何の用なんだろうな」と彼は言った。 「わかりません」 「高田さんに限って、恨みつらみをお前にぶちまけるとは思えないし、おかしなことに関わって、お前をどうこうしようなんてことは一切ないと思うけど」その後の言葉を彼は濁した。 東城は心配しているのだ。誰かが、また、突然、広瀬を連れ去って行ってしまうのではないか、と。この心配はずっと付きまとっている。本音を言えば、広瀬を自分の保護下に置き、誰ともどことも関わらせたくないのだ。 だが、東城は、広瀬が高田に謝罪したがっていることもよくわかっていた。会いに行くことは止めなかった。相手が高田では、仕方がないと思ったのだ。

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