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第12話

広瀬の横に座ると、ローテーブルにビールを置き、一息でグラスを空にした。 冷たいビールが喉を通る。 缶ビールからグラスに二杯目をそそぎ、ローテーブルの上のA4サイズの見開きのパンフレットを見た。 「何見てるんだ?」 広瀬は、パンフレットに手を伸ばすと、東城に渡した。 「タイセクトーン?」東城はパンフレットに書いてあった文字を読む。「会社なのか?」 広瀬はうなずいた。「高田さんの会社です」 「会社のパンフレットくれたのか。今日、どんな話だったんだ?」 「お元気そうでした。俺のこと、怒ってませんでした」 「よかったな。高田さんはお前に事情があるってわかってたんだよ」東城はうなずきながらビールを口にする。「察しのいい人だし、だいたい、怒ったりなんてしない人だ。演技でわざと怒ってるふりしたのは見たことあるけど、本気で感情的に怒ってる高田さんなんて想像もできない」 そう言いながら、そう言えば、広瀬にはよく怒ってたな、いや、あれは怒ってたんじゃなくて呆れてたんだ、そして、呆れる気持ちはわかるって大井戸署にいたみんなが思ってた、と内心付け足した。 パラパラとパンフレットをめくる。業務内容と必要性が簡潔に書かれている。 ノートPCを見ると会社のWebページが開かれていた。イメージの良い高画質な写真をふんだんにつかっている。 「儲かってそうな会社だな」と東城は感想を述べた。 「忙しいそうです」 「だろうなあ。今はどこでも人手不足だ」 Webページをクリックしてみていくと、社長の写真付きであいさつページがでてきた。 ガタイのいい自信満々の男が設立の言葉を書いている。 最後には筆で書かれた太字のサイン。 白石久仁彦。 広瀬はブラウザの別なタブで、この白石久仁彦を検索していた。

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