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第13話
なにが、というわけでもなく、嫌な感覚が腹の中でうごく。
「なんで、高田さんの会社の社長なんか調べてるんだ?」と聞いた。
「今日、いらしたんです」
「いらした?どこに?」
「高田さんと会った、喫茶店です」
「この社長がか?なんで?」
もう一度、写真を見る。油断のならない目をした男だ。
広瀬は、手にしていた本を自分に見せてくる。白石が著者だ。表紙のそでにはWebと同じ偉そうな白石の顔。
おまけに広瀬は自分の質問に答えない。黙ったままだ。
「何の用で、喫茶店にいたんだ?この資料や本をくれるために来たのか?」と再度聞いた。
ページをめくって本の目次をみる。
上から目線の人生訓か、怪しげな自己啓発でも書かれているのかと思ったら、違った。
企業の犯罪防止について真面目に書いてある。
産業スパイ関連のページをみてみると、実際におこった事例や企業が取り組みやすいことがしごくまっとうなに書かれていた。
しかも、読みやすい。今の仕事の説明テキストに採用したいくらいだ。
東城は、読むのをやめて本を閉じた。
広瀬を見ると、彼は、ノートPCの電源を落としている。パンフレットも封筒にしまっていた。
白石のことを説明する気はないようだ。
高田さんから、会社に来ないかと誘われでもしたのだろう、と思った。
そのことを自分に話すのが面倒なのだろう。根掘り葉掘りしつこく質問するし、聞いた話からあれこれ指図するからだ。広瀬が、自分のことに介入されるのを嫌っているのはよく知っている。
今、無理やり聞こうとしても、返事はしないだろう。
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