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第14話

それに、広瀬は、高田に誘われたにしても、就職はしないだろう、と東城は心の中で自分に呟いた。 橋詰の紹介してくれた団体も、他のオジサンたちが紹介してくれる会社も、全部、面接に行き、仕事内容や会社の沿革や代表者、関係者を熱心に調べていたが、結局は断ったのだ。 理由はほとんど言っていなかった。 東城も深くは聞かなかった。 広瀬は、長い間、困難な環境の中にいて、やっと今安息を得たのだ。仕事をしなければと頭では考えていたとしても、心や身体はそうではない。 疲れを癒し、回復するにはまだ時間がかかるのだ。 夜中に、悪夢うなされ、汗びっしょりになって震えて目を覚ますこともある。こわばる身体を東城が抱きしめ、なだめなければならなかった。 朝になると記憶がないのか平然とした顔をしているが、夜になると、闇の中、苦しさがやってくる。 そんな広瀬が以前と同じように仕事ができるまでには、もっと時間が必要だ。 自分は彼を見守っていなければ。 そう思って今日は質問するのをやめた。 それに、もう、遅い時間だ。広瀬はここでソファーに座り、自分のそばにいるのだ。今、心配するようなことは何もない。 ちょっと手を伸ばして引き寄せたら、素直にもたれかかってきた。 陰のない透明な目がこちらを見ている。なんの感情も見せないきれいな瞳だ。

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