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第21話

初出社の日は、早く目が覚めた。緊張していたのだろう。 だが、寝不足という感じはしなかった。頭の中はすっきりしていて、いい寝覚めだ。 東城はベッドの中でまだ眠っている。早起きの彼よりも早く起きるのは久しぶりだ。 広瀬がそっとベッドから降ると、東城が身じろいだ。 起こしちゃって悪いな、と思ったが、彼は目を閉じたままだった。 裸のまま寝室を出て、そのまま2階のバスルームに入った。 シャワーブースに入りシャワーの温度を高めにし、熱いお湯を頭から浴びる。 身体が目を覚ましていく。 自分の白い肌の筋肉の薄い身体が、熱で上気しうっすらと色がついた。 数分身体を流してから、シャワーブースを出て、大きなタオルで身体をふいた。 鏡を覗き込むと、髪を短く整えた自分がこちらを見ていた。 大井戸署で勤めていた時と同じ顔だ。 自分の部屋で会社にいくためにスーツを着た。白いシャツに袖を通し、ネクタイを締め、夏物のスーツをはおった。 黒いメタルの腕時計をつけ、部屋にある時計と時間があっているかどうかを確認した。 着替えていると、ふと、机の上にある写真立てが目に入った。子どもの頃両親と旅行に行った時の写真だ。 もうこの世にはいない若い両親はにこやかにこちらをむいている。 自分はこの時の母親より年上になった。いずれは父の歳も抜くことを、当たり前のように考えている。 広瀬はそっと写真の両親の顔を指でなでた。 見守っていてください、と広瀬は心の中で両親に伝えた。

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