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第22話

身支度を終え、朝食をとりに一階のキッチンに行くと、コーヒーの良い香りがした。 起きたばかりの様子の東城がキッチンでコーヒーメーカーの前にいる。 広瀬がキッチンに入ると振り返ってこちらを見た。 「コーヒー、飲むか?」といって、返事を待たずに広瀬の黒い大ぶりのマグカップに注いでくれた。 受け取って立ったまま口をつける。 マグカップはあらかじめ温められていた。 濃い芳香が口に、鼻に抜ける。 礼を言うと東城はうなずいた。 「朝食は?」 「食べます。東城さんは?」 「食べる」と東城は答えた。 それを聞くと、広瀬は、テキパキと厚切りの食パンをトースターに入れスイッチを入れる。それから、冷蔵庫から石田さんが作っておいてくれた具沢山のポテトサラダを取り出し、テーブルに置いた。 東城の分も含め、卵とベーコンをどっさり焼き、皿に盛り付ける。果物も適当にカットしてだした。 朝食は大事だ。お腹がすいたままではイライラするし仕事もはかどらない。 用意ができたら二人で向かい合って朝食を食べた。 食べている間、東城は言葉少なだった。広瀬も特になにも話さなかった。 食事を終えた後で、彼が言った。 「まあ、そうだな。頑張れよ。何事も初日が大事だからな」 早起きのコーヒーは彼なりの譲歩だったのだろう。 「終わったら連絡してくれ。今日行っていきなり残業はないと思うが、歓迎会はあるかもしれないな。もし、遅くなるなら連絡してくれ」とも付け加えられた。

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