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第24話
広瀬の世話役を仰せつかった形の飯星は、まだ、特定の顧客がいないので社内にいて受付や事務処理を中心に仕事をしている。
そのうち顧客を割り当てられて、外出するようになるよ、と彼は言った。
他の社員が外出から帰ってくるのは夕方遅くの時間で、事務処理や書類仕事の大半はその時間かららしい。
仕事量は多いんだよ、と飯星は説明した。
どんどん人を入れていきたいところなんだけど、白石さんは知り合いベースでしか人をいれない主義だから、なかなか従業員を増やせない。
そういう口調は愚痴ではなく、むしろ楽しそうだった。
仕事が忙しいのは広瀬も好きだから、長い時間の仕事と言われても気にならなかった。
だから、自分を雇ったんだろうな、と高田が自分を紹介した意図は理解はした。
夕方に、自分のデスクに座って、単調なデータ確認の仕事をしていたら、電話対応していた飯星から「広瀬くん、急だけどこれから来客があるので同席して」と言われた。
まだ、他の社員は戻っておらず、社内には飯星と自分だけだった。
会社には年間でコンサル契約をしている企業がいくつもあり、相談を随時受けているそうなのだ。
先ほどまで飯星が電話で話していた相手は、そんな顧客企業の社員だということだった。
「いつも窓口になっている担当者じゃない人が来る。急ぎらしい」と飯星は説明してくれた。「普通は、前日までには予約してくるんだけど、今日の今日というのは珍しいよ。それに、急なのに、どんな相談内容なのか一切言わないんだ。オフィスに来てから話すとしか言わない」
そう言うと飯星は社長の白石に報告の電話をした。そして、電話口で手短な指示をうけていた。
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