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第37話
自分たちの家の駐車場に車を停めると、東城は助手席から降り、早足で家の玄関に向かった。
広瀬に静かにするようにと指で示し、周囲に目を配りながら、鍵を開ける。扉が開くと同時にセンサーが働き家の中に灯りがつく。家の中はしんとしている。
東城は警戒しながら中に入って行った。後ろから広瀬もついていく。誰かがいる気配はない。
東城が二階に行くと身振りで示した。手分けして広瀬はリビングに向かった。
途中で、室内の灯り全てをつけ、耳をすまして歩き、そこここのドアをあけ、中を覗いていく。
一階のリビングや部屋を回り他の人がいないことを確かめる。庭に面したガラスの窓も戸も全てしっかり鍵がかかっている。
カーテン越しに庭を見る。そこにも何の動きもない。
二階から東城が降りてきた。
「二階はいつも通りだった」と彼は言った。
「一階も、大丈夫です」
東城は、大きく息をついた。
「あの車のことはどうしますか?」と広瀬は聞いた。
「そうだな」と東城は言う。「相談しよう。だけど、その前にお前風呂に入ってさっぱりしてくるといい。夕飯用意しておいてやるから。今日は、初出勤祝いで石田さんがお前が好きなビーフシチューを作ってくれてるんだ。腹減っただろう」
広瀬はうなずいた。
言われるままに浴室に向かおうと後ろを向くと、急に背後から抱きしめられた。
「広瀬」と押し殺したような声がする。東城も先ほどの車に緊張していたのだ。
広瀬はしばらくじっとして、東城に抱かれていた。体温や心臓の音が自分に移るくらいの時間、東城の腕は広瀬を離さなかった。
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