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第40話
その夜は、身体の芯までくたくたで、ベッドにもぐりこみ目を閉じると、すぐにうとうとしてしまった。
後からベッドに来た東城の気配をぼんやりと感じる。
「こんな夜に悪いんだが、白石社長のことで話が」と言う東城の声がする。
低い遠慮がちな声だ。
眠りの中なので、声も意識も途切れ途切れだ。
なにか返事をしなくちゃ、と思ったが、出る自分の声には全く力が入らない。
会話にならない会話のあと、しばらくして、「まあ、いいや。今日はやめとくよ。お前、かなり疲れてるから」と東城が言った。
そして、彼は、広瀬をそっと抱きしめた。
家に帰ったばかりのときのように強い力ではない。
広瀬も彼の背に手を回した。触れて、温もりを感じながら眠りたい。
穏やかな呼吸が重なっていく。
このまま絡み合って朝までほどけないといいのに、と思った。
その方が安心できる。
今日は緊張続きだった。
極めつけはあの黒い車だ。身体中が固まって、こわばってしまった。
今は、東城と一緒で、怖い気持ちは薄らいだ。
東城もそうだといいのに、と広瀬は思った。
自分と抱き合って、やすらいでほしい。彼が眠るまで、こうして腕を回していよう。
だけど、しばらくすると、記憶がふっつりと途切れ、広瀬の方が先に深い眠りに入っていった。
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