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第51話
広瀬は、ベッドの中で横たわりながら、胸に当たる孔雀石を指でいじった。
「それ、気になる?」と東城が聞いてくる。
「ええ、まあ」と広瀬は答えた。
東城は、広瀬の手の上に手をおいてくる。孔雀石が少しだけ肌に押し付けられた。手のひらの温かい熱が肌に沁みてくる。
「もっと、豪華に飾ったら、きれいだろうな。真珠とか、エメラルドも似合いそうだ」
「何にですか?」このベッドにだろうか。東城は寝室をシンプルなデザインでまとめたのに、急にデコレーションしたくなったのだろうか。
「お前をだよ。このシチュエーションで、他に何があるんだよ」と苦笑した答えが返ってくる
「俺を?」
「そう。落ち着いた色のブレスレットしてもいいだろうし、そうだ、指輪する?」
「え?」
「この手に似合うと思う。薬指に、大き目の指輪。既婚者と思われるの悪くないだろ。虫よけになる」
東城が本気で言っているのか冗談で言っているのか、よくわからない。
左手の薬指を口に含まれ、付け根をカリっと噛まれた。微かに痛む。
東城に指を好きにさせながら、「手に何かをつけるのは、ちょっと」と広瀬は言った。
東城は指を口に含んだままフフッと笑った。広瀬のとまどいを楽しんでいるのだ。
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