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第55話

オフィスに着いたのは昨日よりもかなり遅い時間になってしまった。 始業時間より早いものの、昨日いた社員は既に全員出社していた。 早いのは当たり前なのだろう。 だけど、広瀬の遅い出社については誰も何も言わなかった。 もしかすると、誰が何時に来るかなど気にしないのかもしれない。 ずいぶん前、大井戸署で、少し遅い時間に出勤した東城を高田がたしなめていたのを思い出す。ここは民間企業で警察とは違うんだ。 飯星に挨拶すると、彼は昨日と同様、穏やかに挨拶を返してきた。 彼はデスクの上のコンビニで買ってきたアイスコーヒーの透明プラスチックカップと食べ終わったサンドイッチの包みをゴミ箱に捨てている。 朝食をここで食べたようだ。今朝は何時に来たのだろか。 「今日も続きで例のビジネスバックを探してきてほしい」と飯星は広瀬に言った。「昨日話に出ていたカバンを探している若い男がいたら、話をよく聞いて、できれば、このオフィスに連れてきて。事情を知りたい」 「わかりました」と広瀬は言った。 「二日連続で単調な仕事だけど、いつもはもっと違うから」と広瀬を送り出しながら飯星は言った。 広瀬が思っていた仕事と違うと言って、嫌がるとでも思ったのだろうか。気を使われているのだ。

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